《私のビジネス日記帳》パートナーとの「共創」からの学び 山口俊比古

2022/10/26 06:25 更新


 「前日は絶対に納豆を食べないで」と念押しされて訪れたのは、岡山県真庭市の味噌(みそ)蔵。生命力の強い納豆菌を持ち込むと、麹(こうじ)に打撃を与えるからだそうだ。

 おいしい水と寒冷な気候が育む発酵食文化が根づいた当地だが、時代の流れで事業者数は減った。そこで立ち上がったのが、味噌蔵やワイナリーなど発酵に関わる7社による「まにわ発酵’s 」だ。蔵の見学ツアーなどを開催し、真庭市の街や食の魅力を発信している。

 ところで、当社はビジョン「お客様の暮らしを楽しく、心を豊かに、未来を元気にする『楽しさナンバーワン百貨店』」を具現化する「共創」の一環で、2年前から真庭市と一緒に蒜山高原のブランディング活動「GREENable」(グリーナブル)を進めている。蒜山の豊かな自然や文化と、当社が培ってきた感性を組み合わせ、新しい価値を持つ「商品」や「体験」の提供を通して「人と自然が共生する暮らし」を目指している。

 人と自然の共生には「利用」と「保全」の適度なバランスが必要だ。かつ、携わる人に楽しさや心の豊かさ、意義深い「体験」をもたらさないと、長続きはしない。

 味噌蔵で伝統の技を守る人々のストイックさを学んだ「体験」は、ただ発酵食を味わう以上に、私の真庭市への愛着を深めるきっかけとなった。ビジネスでも、新たな価値創造に取り組むパートナーシップは、価値観の共有がなければ、なしえることができないと改めて認識した。

(阪急阪神百貨店社長)

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