三越伊勢丹のシェアリングサービス 実証実験で成果

2018/12/27 06:30 更新


 三越伊勢丹のシェアリングサービス「カリテ」が新たな客層の取り込みに成功している。三越銀座店の3階プロモーションスペースで8月1日~11月30日の期間限定で開設したドレスシェアリング売り場は、予想以上の好評を得て常設化を決めた。「普段、見られないような若年層が利用者のほとんどを占めている」という。

(海藤新大)

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 期間中の売り上げ、レンタル客数は目標通りの数値で、アプリのダウンロード数は想定を上回る数だった。利用者は30代以下がほとんどで、ハウスカードのMIカード利用者も4割ほどと、新たな顧客の取り込みにつながっている。「シェアリングに対する、世の中の関心は、やはり大きいと実感した」(神谷友貴三越伊勢丹百貨店事業本部MD戦略部MD政策ディビジョンプランニングスタッフ)と話す。

 同サービスはドレスを販売価格の2~3割の料金で2泊3日で貸し出すもの。専用のアプリを通じて商品タグについたQRコードを読み込むことで、商品情報を取り込み、決済できる仕組み。

 アプリ上でレンタルして商品を自宅で受け取ることもできるが、店頭で実際に試着してからレンタルする客が多かった。パーティーで着用するドレスについて、「何をどう着たらいいのかわからない」という声が多く、アドバイスが欲しいというニーズがあったことが理由に挙げられる。店頭での接客でそうしたニーズに応え、スタイリング提案することで「リアルの場がある」ことの強みが生きた。

 また、実際に購入するよりもハードルが低く、「着てみたかったというような潜在ニーズの引き出し」にも役立った。通常の購買では、事前に調べてブランドや商品を決め打ちで購入する客が多いが、いろんなブランドの中から、普段選ばないような色柄に挑戦するような客が目立ったという。アプリに搭載されているチャット機能も利用者が多く、デジタルやシェアリングの気軽さと、リアルの接客力の連携が好結果につながっている。

 現在は約220点の商品をレンタルできるが「商品数が少なかったことが課題」とし、今後もドレスを中心に商品数を増やしていく。婦人服だけでなく、子供服への拡大も視野に入れている。「オケージョン以外のニーズも取り込んでいきたい」とする。

 貸し出し期間もより選択肢の幅を広げる。将来的には、サブスクリプション(定額制)型や、借りた商品を購入できるような仕組みなども検討しているが、当面は今のサービスの基盤を固めていくことに注力する。「シェアリングを通して服を選ぶことの楽しさを知ってもらうことで、通常の購買にもつなげ、ファッションの文化も守りたい」という。

 現在は売り場を縮小し、同じフロアの自主編集売り場「ルプレイス」内に移動しているが、来年2月に以前と同じプロモーションスペースに戻る。4月ごろにアプリをリニューアルする予定だ。

店頭で商品タグについたQRコードを読み取り、レンタルする客が多かった


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