「いろんな縁で人はつながっている」と実感する出来事があった。本紙10月11日付6面に掲載した企画「高まるクラシックスーツ熱」についてのこと。そこで取り上げた昭和スタイルの「富士東洋理髪店」理容師の阿部高大さんが、記者の先輩が以前通っていた理髪店の息子さんだったのだ。
同じ企画で掲載したメンズブランド「アジャスタブルコスチューム」のデザイナー、小高一樹さんを取材すると、富士東洋理髪店でイベント販売会をするなど関係性が深かったことを知った。マニアックなコミュニティーなので、同じ趣向の人たちがつながっているのは当然なのだろう。
ファッション業界は作る人、仕入れる人、売る人など多くの人たちに支えられており、普段の取材でも人と人の連携が大事だと改めて思う。取材で訪れたブランド側から元気な専門店を紹介してもらうことがあり、もちろんその逆もある。思わぬ出会いから長い付き合いになることも多い。
業界の出会いの場としては合同展の存在が大きい。昔に比べて卸売りのマーケットが縮小し役割が変化してきているが、ビジネスが生まれる場であることは間違いない。仕事への情熱や商品に込めた思いなど、直接会うからこそ感じるものもある。リアルなつながりこそが、デジタルだけでは完結できない新たな価値を生み出すと信じたい。