《めてみみ》成功の方程式

2022/06/06 06:24 更新


 ブランドを立ち上げる若手デザイナーの多くは、大舞台・東京での成功を夢見ることだろう。まず都内で合同展に出展したり、自社の展示会を開催したりすれば、卸先が徐々に増えて、ブランドに共感してくれるファンも広がる。いずれは直営店を拡大していく。

 かつては、そうした想定でブランドを始める人が多かったかもしれない。だが、今は昔の成功の方程式は通用しない。そんなに甘くないという現実を目の当たりにすることもコロナ下で増えた。若い世代では「何をもって成功と考えるか」という価値観も大きく変化している。

 少し前の取材で、自分の夢を実現するために堅実で手堅い道を歩む若いデザイナーに出会った。メンズブランド「ネニュファール」のデザイナーの中村善幸氏は「無名で実績のないブランドを買い付けてくれる店はすぐには見つからないし、卸先が急増するほどファッション市場は甘くない」との思いから、東京ではなく地元の神戸に根を張ったのが9年前。

 まず自身のブランドを売る場として神戸で古着店「タナゴコロータス」を立ち上げた。地道なファンづくりが実り、2年半前に古着店を東京・原宿に開くまでに成長した。渋谷パルコに開設している期間限定店も好評だ。「急がば回れ」ではないが、地道に経験を積み、着実に夢に近づく中村氏に期待したい。



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