《めてみみ》人という〝ソフト〟

2021/12/03 06:24 更新


 「SNSを全く活用していない物販店はない」。ある都心商業施設で聞いた。本部のみでSNSを運用している企業以外は、個人や店のアカウントで店舗スタッフが発信しているという。スタッフの関心はフォロワーを増やし、来店につなげるノウハウにあるとみてアンケートを実施した。

 1日8件投稿する店もあった。約3割の店舗がインスタライブも行っている。コロナ禍での有効な販促手段であり、各店舗とも欠かせない「業務」として取り組んでいるのがわかる。来街者数が増え、入館客数が徐々に戻り始めた今も、以前と変わらぬ頻度なのだろうか。

 接客や商品整理など店頭業務を優先しながら、合間を見てSNSの発信、返信をする。デジタルネイティブのスタッフにとって、DMを書くよりも楽な作業かもしれないが、オンラインとオフラインを同時にこなすのは不可能だ。客数が多い時のSNS対応は開店前、閉店後、休憩時間になっているはずだが。

 デジタル化により、情報発信の手段は格段に広がった。EC重視も進んでいる。いわば〝接客〟なしでも売れるインフラが整備されている。ただ、商品だけの掲載では消費者の購買を喚起する力が弱いからこそ「人」を介した商品提案と接客が求められている。デジタル化が進んでも、人という〝ソフト〟の価値は軽視できない。



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