縫製大手のマツオカコーポレーションは、ベトナムで新工場の設立を進め、来秋の稼働を目指す。既存工場も拡張する計画。RCEP(地域的な包括経済連携)を有効に活用する。中国生地を使ったベトナム縫製品の日本向け拡充に加え、ベトナム縫製品で中国市場を開拓する考えもある。伊藤忠商事グループのプロミネント・ベトナムは、中国素材を充実。縫製拠点のベトナムを活用しグローバル企業への提案を強める。
RCEPが来年1月1日発効する。日中韓や東南アジア諸国連合など15カ国が参加する大型経済連携協定だ。世界の人口、GDP(国内総生産)の3割を占める巨大経済圏が誕生し、この地域での成長を取り込めるかが鍵になる。中国、韓国との初の自由貿易協定という意味合いも大きい。
18年年末にTPP(環太平洋経済連携協定)、19年には日・EU(欧州連合)EPA(経済連携協定)が発効した。コロナ禍もあるが十分に活用できているとは言い難い。
TPP発効前に取材したベトナム繊維協会の会長は「TPPを機にカナダやメキシコ、豪州、ニュージーランド向けを大きく伸ばし、周辺国との差を広げる」と目の色を変えていた。一方で最大のアパレル輸出先である米国でのロビー活動も熱心に続けた。米国のTPP離脱を嘆きながらも様々な手を打つ老獪(ろうかい)さに、強さを感じた。