店頭取材は開店前に済ませるよう心がけているが、時折、営業時間中にずれ込むこともある。商売の邪魔にならぬよう、売り場の隅っこで店長に話を聞いていると、客と販売員のやり取りが聞こえてくる。
最近は、客が「これって今、在庫ありますか」と聞くところから会話が始まることが多い。ECで事前に目を付けた商品もあれば、SNSでフォローしている誰かが紹介した商品の時もある。
販売員も慣れたもので、在庫があればさっと見つけて「こちらですね」と提示する。差し出された商品を試した客は、納得がいくと買って店を出る。客も販売員もその間、必要最低限の会話しか交わさない。
商品がネットで話題になった限定商品や人気アイテムだった場合、すでに売り切れていることも多いが、販売員の「申し訳ございません。完売しております」を聞くと、客は「わかりました」とあっさり帰る。他店の在庫もチェック済みなので店員さんに確認する必要もないわけだ。
接客を受けつつ、じっくり選ぶ客もゼロではないが、事前に目当ての商品を決めているためか、店で過ごす時間は短い。その分、店はSNSの更新やオンライン接客、ライブコマースに割く時間を増やしている。いつの間にか、接客は客が店に来てからではなく、来店前に始めておくべきものに変わったようだ。