例年ならメンズブランドの展示会でのバイイングが忙しい9月だが、今年はコロナ禍で様変わりしそうだ。7~8月の展示会の取材でも、地方のバイヤーの来場はほとんどなかったという。基本的に出張禁止にしている企業も多く、実物を見て仕入れたくてもできない状況が続く。
先日、取材した地方の個店のオーナーは「田舎は風評被害が怖い。東京に行っただけで世間から感染したような差別的な扱いを受ける。そのため、東京の展示会には行けない。どうしても必要で行ったとしても周りには内緒にしている」という。深刻だ。例年のようにSNSで展示会の状況を発信することもない。首都圏に住む人たちとのコロナ禍に対する意識の差に愕然(がくぜん)とした。
ブランド側も完全予約制にしたり、オンラインでの商品説明や動画配信などをしたりと感染防止のため、展示会に工夫を凝らしているが、「何が正解か」はまだ見えず、手探りの状態だ。取引が長く、信頼関係の深い店にはスワッチとともにサンプルを送り、例年通りの発注してもらうことがあるものの、それも限られる。
ウィズコロナの状況は長期化すると予想される。こういう厳しい時期だからこそ、「店とブランドが互いに協力し合い助け合って難局を乗り切ろう」という姿勢が重要になるだろう。必ず終息する日は来るのだから。