《めてみみ》大黒天の使い

2019/12/25 06:24 更新


 京都の銀閣寺から少し南に歩くと、大豊神社がある。大きくはないが、平安時代の初めに宇多天皇の病気平癒を願って創建されたという由緒ある神社だ。境内の末社の一つが大黒天を祭る大国神社で、その拝殿の前に鎮座するのが、狛犬ならぬ狛ねずみ。ねずみ年の前年、12月が近づくと年賀状向けの写真を撮ろうとする人でにぎわう。

 神話によると、大黒天が野火に囲まれて危機に陥った時、一匹のねずみが現れ、火の来ない場所に誘導し命を救った。以来、大黒天の使いとして大事に祭られるようになったという。

 十二支のスタートもねずみ。もともと十二支は、中国で方位や時刻などの表記に使われたものが転じ、干支(えと)となったらしい。ねずみが一番なのは諸説あるよう。伝説の一つでは、神様が様々な動物を集め、元日の朝に誰が最初に来るかを競わせた。結果的に、一等のねずみに名誉を授けたというものだ。

 さて競争の日、牛は自分の歩みが遅いことを自覚し、前夜から出発した。これを知ったねずみは牛の背中に乗り、ゴール直前に飛び降り一着を得た。何やらずるい気もするが、他人のふんどしで相撲をとることも時に必要。間もなく新年。相場格言では、ねずみ年は「繁栄」。牛なら一歩一歩着実に、ねずみは小回りと知恵を生かしながら、それぞれが繁栄する年としたい。



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