「百貨店を進化させるのでなく、誰も見たことのない新しい商業施設を作る」と話していたJ・フロントリテイリングの山本良一社長。その大型複合商業施設「ギンザ・シックス」が4月20日開業した。ネットでの商品の購買が広がる中、わざわざ訪れる特別な場所の創出を目指した。
日本でも世界でも、ここにしかない体験の一つが、中央通りに面した全長115メートルに並ぶ大箱でフルラインを揃える旗艦店。六つのラグジュアリーブランドをはじめ241テナントのほとんどで、品揃えは新作を含めて豊富。当然、どこよりも選びやすく、買いやすい。
大きな吹き抜けは現代アートの展示空間となり、訪日外国人の拠点となる観光バスの乗降スペースや案内所を整備した。商業施設は地下2階~地上6階と13階の一部の4万7000平方メートル。年間で売上高600億円、来館者数2000万人を見込む。
複数の衣料品・雑貨のテナントに聞くと、平均の月間賃料は3・3平方メートル当たり18万円に達する。旗艦店とはいえ、テナントにとって利益を出すのは容易ではない。もっとも、定借契約の商業施設とオフィス(7~12階と一部13階)の賃料収入による不動産事業は今後のJ・フロントリテイリングのビジネスモデルの一つとなる。不動産賃貸型への転換には、改めて小売業としての在り方が問われる。