連載・型破り!マッシュスタイルラボ③

2014/12/22 12:06 更新


《つくる編・MD》女心にどこまでも寄り添う

第2話

 「スナイデル」展示会前の検討会。製品は5色作ったが、女性社員の好みが割れ、どうしても3色に決め切れない。そこで、取締役MD本部本部長の須藤誠が口を開く。「じゃあ、4(色)いくか!」。「やったー」と歓声が上がる。「好みが等しく分かれるってことは、それぞれにニーズがあるということ」と須藤。効率より、女心をどこまでも尊重する。同社の姿勢が表れた一場面だ。

気分を〝見える化〟

「女性の気持ちマップ」を作り、気候の変化で変わる女性の気分をMDに反映している。(須藤MD本部長(右奥)と「リリーブラウン」チーム)
「女性の気持ちマップ」を作り、気候の変化で変わる女性の気分をMDに反映している。(須藤MD本部長(右奥)と「リリーブラウン」チーム)

 昨春の立ち上がり、スナイデルは売上高が大きく前年を割った。初めての経験だった。モードに寄った単品コーディネートに偏り、強みの女性らしいアイテムが減っていた。企画側と消費者の気持ちのズレを埋めるために始めたのが、「女性の気持ちマップ」だ。気候の変化で変わる女性の気分を〝見える化〟し、社内で共有している。

 同マップは、先物買い客とターゲットから聞いたそれぞれのマインド、ニーズと、女性社員の声を月ごとに当てはめる。例えば4月だと、「新歓、部署異動などの飲み会用の服が欲しい。新人が入るのでおしゃれに」「花見用にアウター、中でもトレンチコート、ゆるニットが欲しい」「まだ寒いのでタイツは必須」と具体的だ。

 「タイツをはく時期と脱ぐ時期で、靴の色が変わる。ワンピースのパステルカラーを打ち出すタイミングにも関わってくる」と須藤。細かな気持ちの変化もくみ取り、MDに生かしたいという思いがある。「今は服じゃなくて、カフェで友達とお茶することが女の子たちの一番の関心事。だったら、カフェに行く回数やそこに着ていく服といった、ライフスタイルシーンを具体的にすればするほど、お客にも伝わる」と確信する。

プロパー消化率73%

 全国店長会では、店長たちが商品説明を受ける前に、自店で思う強化品番1~5位、ワースト品番1~3位をアイテムごとに投票する。納品日は無視し、1カ月で売り切るイメージだ。以前は、説明後に投票することもあったが、直感を大事にしたくて元のやり方に戻した。

 女性の直感を尊重する分、できる限りのデータ収集が欠かせない。商品の平均原価率が30%台と高いため、いかにプロパー消化率を上げるかが重要だ。店長らの投票、展示会での受注状況に加え、自社通販サイトの顧客向け受注会の反応や、雑誌社への商品貸し出しをデータ化し、追加生産をかける。

 発注してから納品まで2カ月かかるため、店頭に出してからでは間に合わない。在庫の店舗間移動も、消化スピードごとに商品をランク付けし、効率よく販売スタッフに確認させることで精度が上がってきた。今春夏のプロパー消化率は損益分岐点を大きく上回る73%まで高まった。

=敬称略

第4話



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