連載・型破り!マッシュスタイルラボ②

2014/12/20 10:09 更新


第1話

《つくる編・MD》非効率でも最高のものを

 期中企画をしないため、年4回の展示会でいかに満足させられるものを作るかがカギだ。それにつぎ込む金額はかなりのもの。マッシュスタイルラボが、ものづくりに投資する会社と言われる理由はここにある。

展示会開場ギリギリまで、旬のコーディネートを追求する
展示会開場ギリギリまで、旬のコーディネートを追求する

 

サンプル代1億円

 「うちは外部からベテランを入れてチーフに据えてやるブランドは全くない。一流に育つには、通常のデザイナーの何倍もの経験が必要になる。そこに投資は惜しまない」と、社長の近藤広幸は強調する。展示会1回につき、「スナイデル」で服170~190型、雑貨70~80型を揃える。その数にも目を見張るが、サンプル代に4ブランドそれぞれが年間1億円をかけるというから驚きだ。

 例えば、色。一般的には、商品化する色をロスのないよう決め打ちしたり、主力の色以外は製品にせず、色見本で示す場合が多い。マッシュは3色に絞るとしても、気になる色が5色であれば、全て形にする。非効率だ。

 しかし、「不安の中でお客に提供するより、チャレンジして全色を製品で見て、納得するまでやり切る。経費削減も必要だが、ブランド立ち上げから3~5年までは、お金がかかるやり方でベストを尽くす。不器用な経営だけれど、なるべくストレスのないデザイン環境を整えたい」と尊重する。取締役MD本部本部長の須藤誠も、「決して誇れる部分ではないんですけどね」と苦笑いしつつ、「スナイデルの立ち上げ当初から、ものづくりに投資する姿勢は変わっていない」と話す。

◇◇◇

ギリギリまで粘る

 オリジナル生地の定義は様々で、生地屋に提案されたものを一部変えるだけでオリジナルと呼ぶ企業もある。執行役員企画部部長の楠神あさみは、「うちでオリジナルで作るものは、自分たちで発案するものが多い」という。

 20年経過したビンテージ風の生地を作ろうとしても、同じ混率では表現できない。「その風合いを出すところに一番時間をかける」。レースも図案家に要望を伝えながら作り、プリントもキーポイントの色を決めたあと、それ以外の色の出し方を話し込む。そうやって作るため、1カ月~1カ月半かかる。

 しかし、展示会が近づくと「いったん頭をまっさらにする」。顧客である女性の気持ちは移り気。デザイナーだって、作り始めた時と今では、気分が変わることもある。どうしても着たくなったものは、OEM(相手先ブランドによる生産)企業に展示会ギリギリに仕上げてもらう。

 展示会準備中も、メーカーが引っ切りなしにサンプルを運び、その都度、旬のコーディネートを組み直す。「もちろん企画の段階から、大体のコーディネートのイメージはある。でも、実際商品を目にした時の気分に向き合いたい」。〝今〟を表現するため、展示会の開場時刻まで粘り続ける。=敬称略

第3話



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