大手百貨店の18年度免税売上高が堅調だ。18年9月には台風や地震など自然災害の影響で一時落ち込んだが、10月以降回復傾向にある。上期の伸び率には及ばないが、下期も前年実績を上回る見通しだ。
訪日のリピート客の増加で、地方への波及効果が表れつつある。地域と連携した観光資源や体験型コンテンツの開発など受け皿となる地方百貨店の役割は大きい。
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18年度のインバウンド(訪日外国人)需要は客単価の減少を客数の増加で補う構図が続いている。上期の免税売上高は三越伊勢丹が303億円(前期比20%増)、高島屋が283億円(25%増)、大丸松坂屋百貨店が282億円(40%増)で、買い上げ客数が大きく伸びた。
通期では大丸松坂屋百貨店が当初予想を上方修正して590億円(23%増)を見込む。中国人向けスマートフォン決済サービス「アリペイ」と連携した送客策をはじめ、「買い上げ上位のリピート客を対象に、ラウンジの利用など特別感あるサービスを強化する」(好本達也大丸松坂屋百貨店社長)という。インバウンドの顧客化で、成長を加速させる。21年度の免税売上高は850億円を計画している。
高島屋の免税売上高は下期が6%増で、通期で560億円(15%増)の見通し。中国の大手オンライン旅行代理店と送客での連携を16年4月から始めており、SNSを通じた情報発信の強化や決済の簡素化など顧客の囲い込みを強める。今後も市場拡大を前提にしているが、「米中貿易摩擦などインバウンドに対するリスクはゼロでない」(木本茂高島屋社長)と慎重な見方だ。
インバウンドはこの1~2年年で首都圏や関西圏だけでなく、札幌や名古屋、福岡など地方都市に広がった。三越伊勢丹グループは18年度上期で、札幌丸井三越が32%増、名古屋三越が62%増、岩田屋三越が57%増となり、高い伸びだった。また、日本百貨店協会によると、10都市を除くその他の地方百貨店の免税売上高は18年1~10月累計で44%増えた。売り上げの分母は小さいが、大都市を上回る伸びとなった。
地方の成長は続いているが、首都圏の伸び率は鈍化している。店舗売り上げに占める免税売上高の比率は三越銀座店や大丸心斎橋店、高島屋大阪店などが3割を超えた。今後も訪日客の増加が続くが、「首都圏はすでに飽和状態。物販のシェアは少しずつ減っており、観光や食事など体験型にシフトしている」(杉江俊彦三越伊勢丹ホールディングス社長)とリピート客を対象にしたコト体験型コンテンツの開発に力を入れる。19年の春節(中華圏の正月)が2月5日(連休は4~10日)となるが、消費の変化に対する施策が重要になっている。
