「もし、職人がいなくなったら」。これはフランスのラグジュアリー産業が直面している大きな課題だ。職人の高齢化が進み、30年までにその25%が引退すると予測されている。LVMHは14年、「メティエ・デクセランスLVMH」を設立し、280を超える職業のサヴォワールフェール(匠の技)の育成と継承に取り組んでいる。
(パリ通信員 松井孝予)
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創造性や専門技術
「職人の仕事に対し多くの誤解があります。創造性や専門技術が求められる職業ですが、その魅力が十分に伝わっていません」。メティエ・デクセランス(ME)LVMHのディレクター、マリオン・バルデ氏は手仕事と職人に対する誤解についてこう語る。ラグジュアリーメゾンを支える多くのME(職人、販売などの専門職)は、若い世代にとってまだ遠い存在だ。ペルセプティオの調査では、97%が「職人」に好印象を持つ一方、その仕事内容を具体的に理解している人は30%にとどまる。また80%が進路指導の不足を指摘している。こうした十分に知られていない現状も、人材確保の難しさの背景にある。
この状況を変えるために企画されたのが、毎年1月末に始まる「You&ME」ツアーだ。MEの活動の一つで、傘下メゾンの職人や販売員が、アトリエや店舗を再現したスタンドに立ち、アンバサダーとして学生や転職希望者を迎える。来場者はデモンストレーションを見ながら工程の一端に触れ、職人たちと対話する。会場には数々の専門スクールの窓口も設けられ、進路を具体的に考える契機となる。
