仏LVMHグループがパリで「ショーME」開催 メゾンを支える人材を称え顕彰

2022/12/27 10:59 更新


職人の卵たちと「ヴィルチュオーズ」に表彰された練達の職人たち。中央は22年のアンバサダー、バスケットボール選手のトニー・パーカーさんⒸBOBY

 ラグジュアリー産業の存続、繁栄、発展はサボワール・フェール(卓越したノウハウ)がなければあり得ない。仏LVMHモエ・エヘシー・ルイ・ヴィトンがグループの心臓となる「レ・メティエ・デクセランス」(ME)を称える祭典「ショーME」を、ミラノに続きパリで開催した。

(パリ=松井孝予通信員)

職能の交流と表彰

 会場となったサル・プレイエルには、クリエイション、クラフト、セールスエクスペリエンス(販売)の職(メティエ)に従事するすべての世代が集合。それぞれの体験談を分かち合い、思い入れのある製品や職への夢を語り合いながらコミュニケーションを深める場となり、「ビルチュオーズ」(才能ある人材)の表彰式も行われた。

 また「ショー」というタイトルにふさわしく、JWアンダーソンが「ロエベ」のクリエイションにまつわるトークで会場を沸かせ、著名な振付師サデック・ワフによる職人のジェストを詩的に表現したパフォーマンスが披露された。

会場には各メゾンの作品も展示

才能を見つけ育てる

 仏CAC40(株価指数)の時価総額の約35%を占めるラグジュアリー産業。昨年に続き22年も21%の成長が予測されるが、優れた製品を生み出す人材不足が深刻化している。加えてベビーブーマーの職人たちが定年の時期とあり、技術の継承が危ぶまれている。ラグジュアリーメゾンで構成するコルベール委員会は先頃、技術職2万人が不足しているとし、中高生を招待し世に知られていない職業への理解を促進するイベントを開催した。

 LVMHは数年前から人材採用から育成の独自のエコシステムを開発し、メティエへの精神を養い生産活動全般に対する理解を深めさせるといった社員への投資に精力的だ。傘下75メゾンにおける280を超える専門技能職を「ME」と呼称し、その技能を継承・育成するアンスティテュ・デ・メティエ・デクセランスLVMH(IME)を14年に設立。翌年には人材採用プログラム「ユー&ミー」を発足し、中学から大学、そして社会人の転職希望者たちと出会い、MEの理念を伝え雇用契約を提供するツアー、障害者やLGBTI+(性的少数者)の若者たちを支援する団体との協業活動も進めている。シャンタル・ガンペルレLVMH人事・シナジー部門上級副社長はショーMEの席で22年のユー&ミーの成果として、1200人の雇用と、今年最高となった実習生450人の採用を発表した。その中の一人、難民だったジダンさんは今年IMEでクチュールを学びはじめ、メゾン「クリスチャン・ディオール」の実習生に。「自分の生い立ちを悲しみはしないが、学歴なしでディオールに入れた。でもこれは一歩にすぎない」と現実から目をそらさず、「将来はこのメゾンのアーティスティックディレクターになりたい」と夢を語った。



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