ロンドン・ファッションウィーク・ジュン2020 ロックダウンの中、ファッションの未来を探る

2020/06/16 11:00 更新


 【ロンドン=若月美奈通信員】ロンドン・ファッションウィーク・ジュン2020(LFW June 2020)で、デザイナーたちは様々な新しい試みに挑んだ。新作発表には、無観客ショーのライブもショーの編集動画もない。アーカイブで世界観を見せるブランドを含め、20秒の映像作品から1時間にわたるインスタライブでの公開インタビューまで、シーズンも見せ方も発表時間もそれぞれだ。共通しているのは3月23日から続くロックダウン中にデザイナーが何を考え、どのような行動を起こし、何をクリエイトしたのかを発表していること。閉幕の翌日6月15日は、英国でファッション店の営業が再開された、ポストコロナへの第1歩。歴史に残る3カ月の締めくくりにふさわしいファッションウィークとなった。

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 今回のファッションウィークの内容を表現するとしたら、それは「ロックダウンコレクション」になる。イベントのハッシュダグは「#LFWReset」。デザイナーを取り巻くファッションビジネスのリセットを皆で探った。それはサステイナブル(持続可能)な物作りへのリセットであり、販売シーズンのリセット、ダイバーシティー(多様性)&インクルージョン(包括性)。デッドストックや残反を使用したリサイクルの服や小物が大半で、ノーシーズンをうたうブランドも多い。黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える「BLM」運動への賛同やLGBTQ+(性的少数者)の支援を掲げるデザイナーも多い。スケジュールの時間枠で、黒人系のLGBTQ+イベント「UKブラック・プライド」への寄付集めを目的にライブイベントを行い、ロックダウン中にデザインしたプレコレクションの発表はルックブックとリリースの配信だけという「チャールズ・ジェフリー・ラバーボーイ」のようなブランドもある。

 ユニークな映像発表では、21年春夏の新作とアーカイブのアイテムを合わせて、デザイナー自身が主役を務めるオムニバス形式のファンタジックな映像を自宅で作った「カ・ワ・ケイ」、過去6シーズンのキャンペーン写真をコラージュしたたった30秒の映像を流した「パー・ギョーテソン」が印象的。アシックスとの協業シューズで初参加の「シュープ」(大木葉平、ミリアン・サンス)も、20秒という映像の短さに驚かれる。

 マルケス・アルメイダは新ブランド、リメイドを発表した。ロックダウンで母国ポルトガルで生活しているデザイナー夫妻と2人の娘が登場するドキュメンタリー映像には、コレクションを生産している工場で、過去の残反を使って新作を作る様子が映し出されている。パッチワークを多用したレディスウェアで、このブランドらしいカットオフやダイナミックに波打つフリル、デニムやジャカードで描くカラフルなデザイン。商品は顧客による予約生産だけ。ブランドのECサイトで6月30日までに注文すると、7月30日までにデリバリーされる。

リメイド
リメイド

  ロビン・リンチはサイクリングウェアブランド「ラファ」との協業による、今回限りのカプセルコレクションを見せた。映像は、ロックダウンで孤独を強いられる中、人々との交流を楽しむ過去の場面から始まり、自らホームビデオを手にして、自宅でのコレクション制作やルックブック撮影を映したドキュメンタリー。ラファのデッドストックをはさみで切り、自身の過去のコレクションの残反を縫い合わせてハイブリッドなメンズカジュアルに仕上げる。アランニットなど、母国アイルランドの伝統的なハイタッチ素材とハイテク素材、ぴったり張り付くサイクルリングウェアとゆったりボディーに垂れる布地。それらがオーガニックなラインを描いて融合する。12アイテム7ルックの小さなコレクションには、若い女性デザイナーの一生忘れることのない非日常的な体験の軌跡が詰まっている。21年春夏コレクションは9月のLFWで発表する。

ロビン・リンチ

 フレデリック・エドモンドソンがデザインするライフは、デッドストックやリサイクル素材だけを使った21年春夏コレクションを発表した。映像は、荒れたエレベーター内にモデルが仁王立ちするSF風のイントロに続き、サンプルに囲まれた部屋にデザイナー本人が登場。シグネチャーの取り外したり差し替えが可能なモジュラーポケットシステムを紹介し、いかにもホームビデオといった感じのルックブックの撮影映像へと続く。テーラード素材やサテン、迷彩柄などを組み合わせたり、左右違った服を合体させたハイブリッドなデザインは、ワイルドとリラックスが共存する。

ライフ

 テータム・ジョーンズのプレゼンテーションは、廃棄ゼロを目指す「リ・ラブ・パート1」コレクションをテーマに、18人の編集者や作家、モデルに四つの質問を投げかけ、その答えを紹介する15分の映像。新作は登場せず、サイト上でルックブックによっての発表となる。デッドストックの布地や過去のコレクションのアーカイブ柄を使用したレディスウエアは今秋冬店頭に並ぶ。ボリュームのある袖のワンピースや細身のパンツを合わせるテーラードはパッチワークを多用し、アニマル柄やデニムも差し込まれている。

テータム・ジョーンズ


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