ロンドン・ファッションウィーク・フェブラリー2022 ダイバーシティーとY2Kが交錯

2022/02/22 06:28 更新


 22~23年秋冬ロンドン・コレクション前半は、若手が一斉に新作を披露した。ダイバーシティー(多様性)なクリエイションが広がる一方、レディスではZ世代に人気のY2K(2000年代前半のファッション)を意識した肌を露出したセクシーなスタイルが多い。下着やレオタードのようなシェイプウェアはベロアや厚手のニットといった冬素材で作り、パファジャケットを合わせる。スカートは前シーズン「ミュウミュウ」が出して話題を呼んだローライズのマイクロミニが優勢で、パンツは裾にフレアを流したローライズのタイト。ワクチン接種証明か陰性証明の提示が求められるショーが多いが、マスクをしている人はあまりいない。アジアからの来場者はほとんどないが、パリから日本のバイヤーやジャーナリストが一部来英している。

 ランジェリーのようなボディーコンシャススタイルで注目のネンシ・ドジャカは、ベルベットや厚手のリブニットといった重厚素材や総スパンコール、ミドリフ丈のパッデッドジャケットを加えて秋冬らしくバージョンアップした。花びらのようなブラカップのスリップドレスや細いストリングで小さな布地をつなげたトップに細身のパンツが依然主役だが、マイクロミニから深いスリットを入れたフロアレングスまでスカートのバリエーションが広がり、ブラウン系の色味にヌードカラーやローズ系が加わった。ボリュームモデルや妊婦も登場するなどダイバーシティーも意識して着々と完成度を上げている。もっとも、そろそろ次なる大きな展開が欲しい物足りなさは拭えない。

ネンシ・ドジャカ
ネンシ・ドジャカ

 エフティシアにオフィスウェアが戻ってきた。デビュー以来テーラードを軸とした次世代のワーキングウェアをデザインしてきたが、前季はオフタイムに目を向けたカジュアルスタイルを出した。春夏は2色切り替えのラペルやパンツ、ベルベットの箱ポケットが付いたロングジャケットにフロントに深いスリットが入ったペンシルスカート。そこに、別布の上下を斜にボタンでつないだワンピースなどが加わる。深海を意識した黒やネイビー、ダークブラウンにオフホワイトを加えたカラーパレットも改まった印象を増す。日常を取り戻したロンドンを祝福するかのようなコレクション。

エフティシア

 コーナー・アイブスのデビューショーのテーマはハドソンリバースクール。ニューヨークで生まれ育ち、セントラル・セントマーチン美術大学で学んだアイブスのクリエイションは、常にアメリカを意識している。そこで今回は19世紀にハドソンバレーで巻き起こったアートムーブメントと、同じ地で育った自分の美意識を重ねてみたというわけだ。ジオメトリック柄や風景柄にそれが反映されているが、アイテム自体はY2Kのテレビ番組でタイラ・バンクスが着ていたブーツカットジーンズにスチレット、映画「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイのピーコートにキャスケットといったスタイルがお手本。ピタピタのミドリフトップに長いフリンジが揺れるミニスカート。ウエストベルトをはぎ取ったローウエストジーンズという懐かしいY2Kアイテムも飛び出す。ノスタルジックなムードが漂うのは、大半の布地がデッドストックやビンテージウェアのアップサイクルだからだろう。アメリカ人である以上にZ世代の美意識が伝わる。

コーナー・アイブス

 セントマーチン美術大学の同級生フランチェスカ・カッパーとナターシャ・サマービルが17年に立ち上げたスーパーフェミニニティーをうたうブランド、ポスターガールがショーデビューした。穴が空いたレオタードのような官能的なシェイプウェアがシグネチャーだが、秋冬ということもあり、アフタースキーをテーマに短めのパッデッドジャケットを合わせてスポーティーな気分を加えた。ストレッチジャージーと並びチェーンメールもキー素材で、よく見ると「POSTER GIRL」の文字が浮かぶ。肌の露出やピタピタ感とともに、ジャケットの背中に躍るPOSTER GIRLの文字がY2Kアのイケイケ気分を盛り上げる。

ポスターガール(写真=大原広和)

(ロンドン=若月美奈通信員)

 先日発表されたLVMHヤングファッションデザイナープライズのセミファイナリストに選ばれ、さらに注目が集まったS.S.デイリー。昨シーズンのデビューショーに続きシアトリカルな演出で秋冬の新作を見せた。時に絡み合いそして離れるパフォーマーたち、それは男女であり、男同士、また女同士でもあった。愛憎劇は言い過ぎだが、前回同様に性の開放を訴えているかのようだ。英国の階級社会の研究から始まり、閉鎖的な上流階級に着目、舞台セットはステイトリーホームと呼ばれる貴族の屋敷をイメージした。様々な時代の要素を取り入れたデザインで、一つひとつのルックは個々にキャラクターを持つ。食事会にでも出かけるようなチェックのダブルのスーツ。大きなラペルのジャケットにはシグネチャーと言えるハイウエストのワイドパンツ。オーバーサイズのシャツにタッセルのついたウエストコート、ラウンジでリラックスしているかのよう。テーラードパンツもリボンのディテールのタンクトップを合わせることで、スポーツの準備完了。庭の手入れをするのか、ショーツと長靴に羽織ったセーターには17世紀のプレートのデコレーションが刺繍された。シャツにプリントされたポピーも17世紀のドローイングだ。レザーのウエストコートにブリーフだけの慌て者さんもいた。違った時間帯、違ったアクティビティー、これまでのドレスコードが現代に合っているのかも考えたようだ。レディスが加わっていたが、ロマンティックな服作りに女性からラブコールがあったようで必然的なものだったのかもしれない。

S.S.デイリー
S.S.デイリー

(ライター・益井祐)

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