ケリング サステイナブルテーマにワークショップ

2018/10/26 06:30 更新


 仏ケリンググループのマイケル・ボイトラー・サステイナビリティー・オペレーション・ディレクターが来日し、「サステイナブルを実現する新たなアプローチがファッションを明日へと(つな)ぐ」をテーマにワークショップを東京で開いた。メディアやデザイナー、アパレル企業、小売店、教育機関などファッション業界関係者が集まった。

◆自然があってこそ

 ボイトラー氏はケリングのサステイナビリティー(持続可能性)戦略やケリングが開発したEP&L(環境損益計算書)、モバイルアプリ「マイEP&L」などを紹介し、ファッション商品を製造する上で環境へのインパクトを減らすための原料や調達国、製造国などの〝選択〟の重要性を語った。

 EP&Lは経済活動の環境への潜在的な影響を財務的なアプローチで測る方法。EP&Lをオープンソースにし、経済活動における環境へのインパクトを最小限に食い止めることを推奨している。アプリはすでにファッション関連の教育機関でも活用されている。さらに、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの研究者とケリングのサステイナビリティー専門チームは、原材料調達から製造・デザインの過程をサステイナブルにするための公開オンラインコースも無料で提供している。

 ワークショップではアプリを使い、より環境への負担が少ない選択を競うゲームも行った。

 ボイトラー氏は「自然や資源があってこそファッションは成り立っている。これまではランウェーやトレンド、セレブリティーなどで頭がいっぱいで、サプライチェーンのことを考えてこなかったが、サステイナビリティーとファッションは両立できる」と述べた。

デザイナー、メーカー、小売り、教育機関など大勢の業界関係者が集まった

◆社会に影響与える

 ボイトラー氏、栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当、須藤玲子布取締役デザインディレクターによるパネルディスカッションも行われた。栗野氏はユナイテッドアローズの「テゲ・ユナイテッドアローズ」や「リ・ストア&フリー・ユナイテッドアローズ」、東北コットンプロジェクトやグリーンダウンプロジェクトとの取り組みを紹介しながら、「全体の中でまだ大きなものではないが、株式公開企業としてサステイナビリティーへの取り組みを行っていることを知ってもらったり、活動を通じて社会に影響を与えることができれば」と話した。

 須藤氏は廃棄される原料や生地を再利用して新しい価値を加えたテキスタイルの開発について話したほか、「かつて日本にはものを大切にする気持ちが根付いていた。昔に戻ることはできないが、サステイナビリティーとテクノロジー、クリエイティビティーの三つがつながったときに、魅力があり、意味のあるものができる」と話した。

パネルディスカッションでサステイナビリティーの取り組み事例を共有した

〝選択〟が環境へのインパクト変える

サステイナビリティー・オペレーション・ディレクターのマイケル・ボイトラー氏

 参加者のテンションが上がり、エネルギーを感じるワークショップだった。たくさんのエネルギーを集め、盛り上げるのがファッション業界だ。

 ケリンググループは25年に向けた目標として、地球への影響、気候変動、天然資源への「ケア」、客との「コラボレート」、ケリングの遺産を保護し、未来の世代を育成する「クリエイト」をテーマに掲げている。環境関連では、サプライチェーンにおけるEP&Lに基づく環境負荷額の40%削減、二酸化炭素排出量の50%削減、原材料の100%トレーサビリティー(履歴管理)達成などを目指している。今年末にはアニマルウェルフェア(動物の福祉)に関する業界初の新たな基準を発表する予定だ。

 EP&Lをベースに開発したアプリ「マイEP&L」は、世界で約2万5000回ダウンロードされている。重要なのは数ではなく、クリエイションに関わる質の高い人に使ってもらうこと。デザインコミュニティーに対して発信を強めながら、内容に関してもっと多くの事例を知りたいという要望に応えていきたい。アプリを通じて、デザイン、素材、原産地などの〝選択〟が環境へのインパクトを変えることを理解してもらうことが重要だ。

マイケル・ボイトラー氏


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