東京五輪へ東京からにぎわいを
17年は後半に入って百貨店でのアパレル市況が回復を見せるなど明るさが見えてきた。各社の構造改革にもめどがつき、今年はデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルへの挑戦も本格化する。
――17年を振り返ると。
年初にデフレ終息の期待感はあったものの、前半は消費者の節約志向とマーケットの二極化の流れの中で中間価格帯は苦戦を強いられました。しかし、後半に入ると好調な企業業績やインバウンド(訪日外国人)を背景に、日本経済の先行きにやや明るい兆しが見えてきました。
衆院選の自民党圧勝により、政府主導の「アベノミクス」による消費刺激策やインフレ誘導に一段と拍車がかかることを期待したいですね。19年10月予定の消費税引き上げ対策や2年目を迎える「プレミアムフライデー」が浸透し、円安・株高が続けば、消費マインドも上向き、1800兆円もの個人金融資産も活発に流動するでしょう。
――ファッション分野は。
8月後半から、百貨店の衣料品売り上げが前年実績をクリアするなど、節約疲れの反動からか中間層の財布のひもが少し緩んできたように思います。まだ微風ですが、このフォローウィンドを本物の消費回復につなげていくことが肝要です。
そのためには、「コト消費」を具現化した体験の場を提案し、モノの購買を促す仕組み作りが重要になります。オムニチャネルを活用し店頭をサロン化するなど、お客様のおしゃれ心をくすぐる魅力的なサービスを流通業の皆さんと一緒になって考えていきたいと思います。
――今年の取り組みは。
当協会の2大活動テーマである「需要創造」と「市場拡大」を引き続き推進します。11年に企業とクリエイターのマッチング事業としてスタートした「JAFICプラットフォーム」も石川、尾州、播州、遠州の素材メーカーとのジョイントへと広がり、確固たる事業になってきました。
4年目となる純正国産表示制度「Jクオリティー」も順調に拡大しています。認証取得企業は860社を超え、ヒット商品も生まれるなど基幹事業へと育ってきました。クリエイションから素材、染色、縫製、販売まで全てメイド・イン・ジャパン製品が、やがて日本文化となり、クールジャパンへとつながっていくと期待しています。
匠の技で新たなビジネスモデルを
――18年はどんな年に。
景気の回復局面も6年目に入り、デフレ脱却の期待が高まってきました。昨年はインバウンド(訪日外国人)需要も過去最高になり、政府が目標とする20年の4000万人達成も視野に入ってきました。円安・株高とともに、消費の底上げにつながるプラス要因です。
アパレル・ファッション産業はIT(情報技術)化の急速な進展により、従来型のビジネスモデルだけでは生き残ることが難しい時代になりました。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を積極的に活用したRFID(ICタグ)導入など構造改革事業の加速化と、需要創造に不可欠な新進クリエイターと若者の継続的な参入を促すために、魅力ある業界にすることが喫緊の課題です。
――具体的には。
例えば、伊ミラノ・サローネは家具の見本市でしたが、ファッションや伝統工芸品も出品され、今や世界から数十万人の出展者やバイヤーが集まる一大イベントになっています。
東京は20年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、お祭り機運が高まり絶好の機会です。銀座、原宿、新宿、渋谷など都内の様々なエリアで日本のファッションや伝統産業、ライフスタイルからカルチャーまであらゆる分野の匠の技を世界中の人々に紹介するビッグイベントが開催できれば、と考えています。
東京都や経済産業省とも連動してお祭りやにぎわいを創出し、東京をアジアのハブとして世界のファッション都市、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークに続く第5の発信拠点にすることが重要です。
――ビジネスの面では。
第4次産業革命とも言われる情報産業の発展により、異業種参入の勢いが増しています。迎え撃つファッションアパレル業界としては、お客様一人ひとりにいかに個人の満足をご提供できるかがキーポイントです。会員企業が長年蓄積してきたメーカー機能は一朝一夕にできたものではありません。本物志向に応えられる匠の技術があれば、どんな企業が参入しても恐れるに足りない確固たる経営基盤を構築できます。
大量生産・大量販売の時代は終わり、パーソナルに対応したカスタマイゼーションや利便性へと消費者のニーズも大きく様変わりしています。企業の社会的責任や循環型社会、地球環境保全の観点から、エシカル(倫理的な)、サステイナブル(持続可能な)などの価値観も生まれています。それら全てをしっかりと把握した上で、新たなクリエイションを創造できるかがファッションビジネスの永遠の課題です。
当協会も、多様な価値観をビジネスチャンスと捉え、果敢にチャレンジする気概を持った企業を積極的に支援していきたいと考えています。