【ヒット商品はどう生まれた?】「ジルバイジルスチュアート」フリルトートバッグ

2023/07/12 00:00 更新


 物があふれる中で、思いを込めた商品に客が共感し販売につながっている。企画だけではなく、魅力を届けるPRまでが一体となって奮闘し、客も巻き込みながら販売する商品は盛り上がりを見せている。企画、PRに話を聞いた。

ブランドらしさを盛り込む 客とコミュニケーション深め一緒に楽しむ

 98年の入社以来、企画畑一筋のデジタルジェネレーション事業ディビジョンbd事業部ONEJILLセクションジルスチュアート/ジルバイジルスチュアート商品戦略企画チーフの社舞子さん。「ジルバイジルスチュアート」のバッグ企画を初めから担当、16年に発売した「ビジューロイヤルトート」が大ヒットし、後継の「フリルトート」もさらにヒット商品となっている。ブランドらしさを盛り込んだバッグで、改良を重ねながら人気が続いている。同事業部のONEJILLセクションジルバイジルスチュアートコミュニケーションマーケPRの高橋いであさんとともに、客とのコミュニケーションを深め、魅力を伝えている。

社さん(左)と高橋さん

 ビジューロイヤルトートは「キラキラしているものが好きな顧客が多く、ビジューが似合うと感じていた。だが、当時はビジュー付きのバッグがなく付けてみたら火がついた」と社さん。デザイン性は変わらないが、サイズ感の見直しや定期的に新色を出すことでロングセラーに。フリルデザインによるフェミニンテイストも購買をくすぐる要素となっている。

 社さんは「ほかにないデザインと自らの手で作り上げたブランドらしさが揃ったバッグだから、ヒットを続けている」ともいう。アパレルには雑貨のデザイナーが居ない場合も多く、ODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業に任せることが多い。ブランドらしさを理解しデザインも仕様などの確認もできることで、商品の完成度が高くなっている。

 カラーはピンクやアイボリー、グレー、モカなど豊富で、新色を加えていくことでピンクだけでも10色以上。コレクターもいるほどで、18年の10周年ではカラーの人気投票を行い、顧客と一緒に盛り上がった。1位はブルーグレー。「客とのコミュニケーションや時代性を大事にしている」ことも長く愛されている要因だ。

デザイン性と程よいロゴ

 19年2月に発売したビジューロイヤルのデザインを受け継いだ「フリルトート」が今の最大のヒットになっている。累計販売数は大小タイプ合わせて約11万7000個。キャンバス素材でカジュアルにも使え、「デザイン性と程よいロゴがマッチしている」ことが人気となっている。白と黒が定番で、こちらもモカやピンクなど多色展開。ティックトックで紹介する顧客もいて、「一気に売れ始め、売れ筋をお客様が作ってくれるなど、助けられている部分もある」という。

19年の発売から売れ続けているフリルトートバッグ

 「バッグのフリルなどからブランドが認識されている。一種のカルチャーになっている」と感じている高橋さん。フリルトートは推し活のシーンでも広がっている。アイドルやテーマパーク好きな人が使うことも多い。今年の年始には、ブルー、ピンク、パープル、オレンジの4色販売を仕掛けた。商品撮影の時には背景や花などにオレンジを使い、カラー展開を工夫して伝えている。物作りで使うデジタルシュミレーション「CLO」を、客とのコミュニケーションに使った企画も実施。インスタライブで「CLO」の画面を映し、欲しい色の人気投票「あなたの色、叶(かな)えられますよ」を行い、客の声や意見を反映した商品を1月に販売。「お客様が店頭に並んだ」など、半年かけて行った企画・イベントが盛り上がりを見せた。

ワンテーブルで共有

 働き方も変えている。企画やMD、PRがそれぞれがバラバラで走るのではなく、週に一度同じテーブルに集まり、情報や進捗(しんちょく)状況を共有する会議を始めた。社さんは「PRのアイデアは物作りの初期からあるはず。企画の段階でディスカッションすることで、より良い商品ができる」と、風通しが良くなりチームで作っている雰囲気を感じている。

 「以前は企画から直接商品への思いなどを聞く機会が少なかった」と高橋さん。商品製作の背景やこういう服に合わせたいから作っているなど、より具体的な情報が聞けるようになった。2週間ごとのインスタライブでは話す内容が濃くなり、説得力が上がった。

 15年にアルバイトから入社した高橋さん。一番店や副店長勤務、4店の店長経験を経て、PRに。入社面接時にPRが希望と言っていたことで事業部から声を掛けられた。店頭ではスタッフスタイリングとインスタライブ配信は特に力を入れ、ブランド内で1位になったことも。「見てくれている人がいる。やりたいことは言い続けて、ほかの人より何か違うことを見つけて頑張ってほしい」。自身はブランドの強みを生かして、海外の人や環境に対しても、ほかではできないPR活動をやっていきたいという。

 社さんは今後、大人に向けたラインナップ作りにも頑張りたいという。環境への意識が高く、「ブランド認知があるからこそ、伝えられことがあると思う」という。就活生には「自分の唯一無二を持つこと」とアドバイスする。

(繊研新聞本紙23年7月12日付)

関連キーワード人が育つ企業



この記事に関連する記事