西日本豪雨 産地は浸水被害 小売りはほぼ通常営業

2018/07/09 16:10 更新


 6日から8日にかけての西日本豪雨は、広域で多大な被害をもたらした。浸水や断水などによる操業休止、小売店では休業や閉店時間の繰り上げなどが相次いだ。9日になり、一部店舗で営業休止が続いているものの、大型小売店や工場ともに、おおむね通常通りの営業に戻っている。もっとも、土砂崩れや陥没などによる道路や公共交通網の一部不通により、商業物流、中元ギフト関係の配送の休止や遅配などは続いている。

《小売り》

 量販店のイズミ(広島市)は、9日も岡山市の「ゆめタウン平島」と広島県呉市の「ゆめマート安浦」を休業した。7日は岡山県真庭市の「ゆめタウン久世」が浸水のため休業、広島県江田島市の「ゆめタウン江田島」は1階のみの営業とした。その他のSCも営業時間の短縮や一部売り場の閉鎖が複数出たが調査中。従業員も自宅被害などが多数出ている、という。量販店のフジ(松山市)は7日、従業員の出社が難しく、愛媛県宇和島市のフジ吉田店を休業した。8日は高知県宿毛市のフジ宿毛店の閉店時間を1時間繰り上げた。従業員では自宅への被害が複数出ている模様。その他、衣料品などの売り場を閉鎖して食品のみの営業とした店舗もあったが、9日からは全店通常営業している。

 百貨店やSCも広島、岡山、愛媛、関西、九州地区など多くの店舗が閉店時間繰り上げや分店を中心に臨時休業があったものの、9日はほぼ全店が通常営業している。ただ、中元などの冷凍配送の休止や配送の遅配が発生している。

 九州地区の商業施設では主に6日の営業に影響が出た。イオン九州ではスーパーセンター岡垣店が終日営業見合わせ、19店で閉店時間を繰り上げた。午後から閉店した福岡県の小郡SCでは店内にまで浸水、人的被害はなかったが営業再開の見通しが立っていない。

 はるやま商事は、浸水で8日に「はるやま」の愛媛・大洲店と福岡・久留米店を営業休止したが、店内準備が整い次第、営業を再開する。青山商事は「洋服の青山」で岡山・平島店が7~8日に休業したが、9日から営業を再開している。愛媛・大洲店は7日から休業中。ファーストリテイリングは、中国・四国地区の複数店舗で浸水があったが、多くは早々に復旧して営業している。ただ、9日午前段階で、「ユニクロ」の広島・呉レクレ店と愛媛・大洲店の2店が営業不可能な状況。大洲店は店内浸水がひどく、呉レクレ店は商業施設の断水が理由で、2店の開店日めどは立っていない。「ジーユー」はすべての店舗で営業している。被害エリアの全店舗の従業員は、すべて無事との安否確認は取れているが、自宅や車などの被害は多数出ている模様。従業員の親類・親戚の安否確認を急いでいる。

浸水したイオン小郡SC(6日夕方)

《メーカー・産地》

 先染め織物で知られる播州産地や、ニットの和歌山産地、パイル織物の高野口産地、タオルの今治産地は、大きな被害は出ていないものの、デニム産地である岡山、広島地域には一部で被害が発生した。特に広島県福山市神辺町周辺では浸水被害がでている。ロープ染色を手掛ける坂本デニムは事務所と工場で浸水被害が発生、現在復旧作業中だ。また、岡山県井原市を中心とする備中織物構造改善組合によると、組合加盟の機屋に被害は出ていないものの、整理加工場の備中染工で浸水被害が発生しており、物流にも影響が出ているという。

 広島県福山市のデニム最大手のカイハラ、染色加工の山陽染工、洗い加工の四川、産元商社の菱友商事、岡山県倉敷市児島の洗い加工、豊和などは大きな被害は出ていない。ただ、福山市以西では高速道路も通行止めとなっているなど、今後も物流に大きな影響が出そうだ。豊和は、大きな浸水被害が出ている岡山県倉敷市真備町にある縫製、アパレルのナカノに対し支援を決めた。

 三備地区のユニフォームメーカーでは一部企業に物流センターの浸水や原反濡れなどがあったものの、大きな被害はない模様。ただし、ユニフォームメーカーが沿線に点在するJR福塩線の不通が続くなど物流網が復旧しておらず、今週の各社の展示会に影響が出る可能性がある。カイタックホールディングスでは岩国ファクトリー(山口県岩国市)で雨漏りが発生したが、被害は軽微という。

 帝人は、岩国事業所(山口県)、松山事業所(愛媛県)など中四国に複数の事業所があるが、いずれも人的被害、物的被害はなし。人工皮革やポリカーボネートの加工を行う三原事業所(広島県三原市)は停電により、9日の操業を休止し、従業員も出社を見合わせた。三菱ケミカルは各事業所とも浸水や損壊といった被害はなく、事業所全体の操業停止はない。物流面の混乱で一部生産調整しているプラントはあるが、影響は軽微。石化関連の水島事業所(岡山県倉敷市)は一部従業員の自宅に浸水などの被害があったが、大多数の従業員は通常通り出勤している。

 ワールドは一部グループ工場に雨漏れがあったが、通常通り営業している。直営店舗については、6、7日は出店施設の営業状況に合わせた早期閉店などがあったが現在は通常営業している。なお、卸先で岡山4店、広島1店、愛媛1店、京都1店で浸水被害がある、との報告を受けている。

《物流》

 高速を含む道路の通行止めや鉄道の不通で、一般商業物流、宅配や中元貨物の集荷・配達不能など、物流面の影響も広がっている。佐川急便、ヤマト運輸、福山通運などの大手物流各社は、ホームページで自社の最新集配状況を告知しているが、中国、四国を中心に、一部関西や岐阜県を含む広範囲のエリアが集配不能・遅延エリアとなっている。



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事