【連載】ローカルでいこう 17年春・福岡編②

2017/05/04 06:35 更新


 インターネットで全世界の情報が簡単に手に入るようになり、"ご当地ファッション"は死語になった。しかし、福岡にはまだ残っている。

 福岡Tシャツに続き、「ヒッピネス」(ローラーズハイ、小栁信二社長)が企画するキュプラのカシュクールコート(2万1000円)もその一つだ。ディベロッパーの開発担当者から、「福岡の女性は皆ヒッピネスのコートを着ている」と聞き、現地の女性に尋ねると、「持っている」という声は確かに多かった。

店ごとに振れ幅

 同社は93年にセレクト店としてスタートし、97年にオリジナルのヒッピネスを立ち上げた。一時、東京で展示会を開いていたこともある。キュプラコートは約15年前からの企画で、通常は裏地として使われるキュプラの発色の良さや肌あたりの良さが売りだ。春と秋は羽織り、夏は冷房対策、冬はコートのインナーとして1年中提案し、メンズも欲しいという声に応えて現在は3サイズある。色によって印象が変わるため、ジェンダーレス、エイジレスとして打ち出している。色やサイズ違いで5枚以上持っている顧客も多い。

 天神近くの直営店のほか、天神・ヴィオロの「ナウユーノウ」、大名の「カオスボヘミア」、薬院の「ディティ」など市内の他店でも販売している。それが、ヒッピネスのご当地ブランドの印象をより強くする。客の取り合いにならないか聞くと、「店ごとに表情の出し方が異なるので、その振れ幅がお客さんにとっては楽しい。他店と協業することで、企画も磨かれる」と、ヒッピネスの竹田一貴企画・営業担当は話す。こうした協業は「屋台で知らない人同士が楽しく過ごす、福岡の人の気質が生み出した形」と分析する。福岡のファッションコミュニティーの濃さを象徴する事例でもある。

豊富な色提案が魅力のカシュクールコート

東京の物は今さら

 仕入れている店にとっても、すぐにやり取りできるヒッピネスの存在はありがたい。福岡ブランドを中心に扱うセレクトショップのナウユーノウの秦寛史社長は、「同質化が進む中、今さら東京のブランドやインポートを福岡でやっても誰のためにもならない。今必要なものを、地元のコミュニティーでクイックに形にしていく方が理にかなっている」と話す。

 キュプラシリーズは、一部京都を含めて九州で縫製、地産地消アイテムといえる。16年秋から、ローラーズハイ出身の営業代行を通して九州外への卸も本格化したが、「ブランドや物作りを理解してくれる店と付き合いたい」(竹田さん)という思いは変わらない。

 福岡発ご当地ブランドという切り口は、飽和の時代の中でも新鮮だ。

「ヒッピネス」企画・営業担当の竹田一貴さん


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