「在庫を利益に変える」在庫分析クラウドシステム「フルカイテン」を開発・販売するフルカイテン。12年5月にベビー服ECで起業した同社は、在庫が原因の3回の倒産危機に直面するなかで独自の在庫管理システムを構想した。自らの商いを通じた試行錯誤を経て確立したこのシステムは、在庫の運用効率を向上させ、売り上げ、粗利、キャッシュフローの最大化を目的としたクラウドシステムとして業界で高い評価を得ている。現在、大手アパレルやスポーツメーカーをはじめ多くの企業で導入が進んでいる。
笑顔を見るために
社長の瀬川直寛は、学生時代に慶応大学理工学部で、統計理論やAI(人工知能)を駆使して天然ガスの熱力学変化に関する予測モデルを研究していた。卒業後は外資系IT企業や日本のスタートアップ数社に勤務し、デジタルマーケティング支援サービスなどBtoB(企業間取引)ビジネスにいそしんでいた。しかし、十数年間デジタルシステム業界で働くなかで「俺の仕事は、本当に誰かを笑顔にしているのか。人を幸せにしている手触り感が欲しい」と思い立ち、34歳だった11年に独立を決意した。当時、妻の亜実が第一子の長女を妊娠していたこともあり、0~3歳までの女児を対象にしたベビー服販売EC会社「ハモンズ」を12年5月に立ち上げた。瀬川は「ベビー服を通じて全国のお母さんたちを笑顔にしたい」と意気込んだ。しかし、会社設立間もない13、14年に連続して、会社倒産の危機を迎えることになる。