汗をトリガーに有効成分を肌へ 岐阜大学発ベンチャーが共同研究で実証

2025/12/17 11:00 更新NEW!


「クレーズ・テックス」に閉じ込めた保湿成分が肌に残っているかを実験した

 岐阜大学発のベンチャー企業ファイバークレーズ(岐阜市)は、保湿成分のセリシンを閉じ込めた多孔質繊維「クレーズ・テックス」が、汗という弱酸性環境をトリガーにしてセリシンを徐々に放出し、肌に届けることを共同研究で証明した。

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 クレーズ・テックスにはナノレベルの穴がたくさんあり、その中に保湿成分のセリシンを内包できる。汗をかくとその汗が合図となり、繊維の中に入っていた成分が少しずつ肌に届く仕組み。

 研究は東京の明星大学、服飾付属品や衣料品製造のクリメイト(岐阜県関市)、新潟県工業技術総合研究所と共同で行い、その成果を11月に行われた「第89回日本皮膚科学会東京支部学術大会」で発表した。

明星大学、衣料品製造のクリメイト、新潟県工業技術総合研究所と共同研究を行った

 研究方法は、腕に3センチ角のクレーズ・テックス生地を弱酸性の人工汗液で湿らせ、2分間貼り付けた。その後、皮膚に残った成分がセリシンと判断。貼った直後の相対指標「皮膚残留性比率」3.28を算出した。並行して、角層に含まれる水分量・皮膚表面の温度・皮膚表面の皮脂膜の酸性度をモニタリングし肌状態の安全性を確認している。

 長曽我部竣也社長は「繊維の表面に薬剤をコーティングする従来の機能性素材は本当に成分が肌に移行しているのかという定量根拠の不足が指摘されているのに対し、クレーズ・テックスはこの共同研究で肌の上にセリシンが残っていることを数値で裏付けることができた」と話す。

 今後は肌の潤いを保つセラミドや抗酸化作用のあるビタミンE、清涼成分のメントールなど、様々な成分を入れられるようにし、実生活条件での検証を進めていく。「成分量や徐放性などを繊維の孔制御・後処理により設計してコントロールすることで、より幅広い用途展開に向けた製品開発へ生かしていく」と話した。



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