【ファッションとサステイナビリティー】V&Aジャパン代表取締役会長 宮本淳氏 ポリエステルの堆肥化、全国で

2022/03/29 05:29 更新


 土の中の微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される、生分解ポリエステル。テキスタイルコンバーターのV&Aジャパン(大阪市)が手掛ける「クラフトエボ・リテ」が注目されている。素材の販売にとどまらず、回収、廃棄まで含めた仕組みを10年かけて構築した。

 V&Aジャパンは、海外のスポーツ・アウトドアアパレルへのテキスタイル販売を主力としています。クラフトエボ・リテは、その分野に求められる機能と耐久性、生分解性を両立させることにこだわりました。

 一昨年から販売を始めましたが、開発は20年前から。米国や日本企業と組み、ベースとなる素材は樹脂レベルで完成していましたが、堆肥(たいひ)化する仕組みを構築するのに時間を要しました。その樹脂を売っても、最終的に焼却されてしまうなら全く意味がない。「ゴミにならないようにするにはどうしたらいいか」を突き詰めて考えました。海外スポーツ・アウトドアアパレルの環境意識の強さに触れてきたからこそ、見えたことでもあります。

 クラフトエボ・リテは、堆肥中に埋めて1年で二酸化炭素と水に分解されます。クラフトエボ・リテの分解を最も促進させるのはどんな堆肥か、どんなバクテリアがいる土壌がいいか、適切な温度条件などを研究しました。

 現在は、日本で唯一廃プラスチックを堆肥中で分解する施設として認定されている愛知県の牧場と提携しています。クラフトエボ・リテは堆肥化の拠点を全国に広げて初めて、多くの方に使ってもらえると思っています。古着の運搬にはコストも二酸化炭素も発生しますし、極力その土地で完結できるようにしたい。提携牧場がある自治体とは、人の手で行っていた堆肥管理を機械化する試みを進めています。

 まずは日本の何都市かで回収・分解するモデルを確立し、成功例を見せて賛同者を増やしたい。自社ブランド「タビタリウム」は、クラフトエボ・リテのモデルケースを示すために立ち上げました。直営セレクトショップ「MANO」で販売し回収もしています。

 スポーツ・アウトドアアパレルでは既に複数社で採用が決まっています。もちろん堆肥化が前提で、2、3年後には店頭に回収ボックスが設置される予定です。企業のユニフォームや学校の制服でも商談が進んでいます。樹脂成型で食器やカトラリーにすることも可能で、学校給食のトレーや椀(わん)、箸にも使ってもらい、環境教育に生かしてもらえればと思っています。

 各副資材メーカーと縫い糸や芯地、ボタン、ファスナーも開発中で、ほぼ完成しています。これまではTシャツなどあまり付属がないアイテムでの使用に限定されましたが、今後は幅広く使ってもらえます。

 ゆくゆくは海外でもこの仕組みを構築したい。国内と並行し、独や米などでも堆肥化の試験をしています。糸・生地化は海外の協力工場でコストを合理化し、海外のボリュームゾーンにも訴求できる価格にしていきたいと考えています。

宮野淳氏

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