【ファッションとサステイナビリティー】一般社団法人SWiTCH 佐座槙苗(まな)氏 企業内に環境アンバサダーを

2022/01/31 05:29 更新


 20年に予定されていたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)が新型コロナで延期された際、それを問題視した若者が模擬コップを開催し、各国首脳に政策提言した。その後、佐座さんはそのグローバルコーディネーターアジア代表を務めた。佐座さんは21年1月にSWiTCHを設立。温暖化を止め、持続可能な社会を目指す活動を展開している。

 気候変動は危機的状況にありますが、残念ながら日本は世界のサステイナブルの波に乗り遅れています。問題は環境リテラシーの低さ。気候変動に関して英語でウェブ検索すると、個人や団体が発信する情報が実に多く出てきますが、日本語では少なく、偏りがあります。これでは国民の気候変動に関する感度が低くなり、多様なアクションにつながりません。多くのゴールが設定されるSDGs(持続可能な開発目標)についても、日本ではほとんどの人が自分に当てはまらないと感じているとの調査結果もあります。SDGsの意味を理解せず、自分事として捉えていないのです。

 そこで当団体として、環境リテラシーを引き上げるリーダーを25年までに100万人にする「アンバサダー育成プロジェクト」を始めました。多様性ある持続可能な社会を実現するため、30歳未満の若者を対象にアンバサダーを育成し、彼らが所属している組織で循環型システムを構築し、カーボン・ニュートラルの実現を目指します。

 もちろん、ファッション企業にもアンバサダーの配置を働きかけます。当団体はサステイナブルファッションに関する世界最大のデザインコンテストである「リドレスデザインアワード」と契約を結びました。今後、解体・再利用しやすい服のデザインなど、リドレスが持つノウハウを伝え、サステイナブルファッションを推進するデザイナーの育成に取り組む予定です。

 同プロジェクトは単なる認証制度ではありません。アンバサダーとなり、ポジティブなアクションにつなげていくためのプログラムです。定期的にチェックアップし、アンバサダー同士で事例を共有し、スケールアップも促します。

 COP26で日本が2回連続の化石賞をとったのは残念ですが、その分、循環型システムの構築に力を入れることに世界は期待しています。繊維分野を筆頭に、日本の技術力は高いからです。ファッション業界に望みたいのは、何ごとも1社だけでやろうとしないこと。特にゼロから創り出すのは時間がかかりますから、既存に良いものがあればそこに乗り、パートナーシップを結び、仕組みを構築して欲しいと思います。

 日本人はともすると完璧な状態でないと前へ進もうとしないきらいがあります。しかし、気候変動に対するアクションは、世界もまだ正しい答えを知りません。まずは動き出し、チャレンジすることで見えてくることがあると思っています。

佐座槙苗さん

(繊研新聞本紙22年1月31日付)

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