【ファッションとサステイナビリティー】GOTS認証取得を後押しする「CSCS」 プロジェクトの背景や意義とは?

2024/10/31 05:30 更新NEW!


CSCSで初めてGOTS認証を取得した三恵メリヤス。原料や製品の管理、工場や倉庫内の清掃を徹底している

 オーガニック繊維を使った製品の国際基準「GOTS」(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)を策定する非営利団体グローバル・スタンダードが、小規模事業者による認証取得を後押ししようと動いている。そのためのパイロットプロジェクト「コントロールド(管理型)サプライチェーンスキーム」(CSCS)が日本で先行し、昨年5月に縫製工場の三恵メリヤス(大阪市)を中心としたグループがCSCSで初めてGOTS認証を取得した。世界で導入を目指し、検証が続いている。同プロジェクトの背景や意義をプロジェクトコーディネーターだった西野祐子さんに聞いた。

ポイントは内部監査

 ――CSCSとは何か。

 同プロジェクトは最低で8、最大で30のサイト(工場などの事業所)で構成され、各サイトの従業員が20人以下のサプライチェーンならグループで認証を取得できる枠組みです。大事なポイントは〝内部監査〟による運営を認めること。例えば、化学物質を扱う染色のような主要な工程は第三者機関による監査を入れないといけませんが、全サイトの監査は必要ありません。

 目安ですが、CSCSはサプライチェーンに10サイト以下の場合は1サイトから、20サイト以下の場合は2サイトから監査に入ります。監査をするサイトの件数は最終的には認証機関のリスク査定によって決定しますが、通常は全サイトに監査が入りますから、CSCSだと監査費用の負担は随分違うと思います。

 代わりにサイトごとにGOTS担当者を決めます。また、サプライチェーン内に内部監査員を設置し、ほかの工程を担うサイトを訪ね、GOTSの基準に沿って生産活動ができているかを定期的に監査しなければなりません。最後には第三者機関によって、内部監査が適切に管理されているかを評価するという流れです。

 ――日本が先行する理由は。

 日本のアパレル産業は細分化されたサプライチェーンが特徴ですよね。それは今も全国の繊維産地が支え、各地域の中小企業や小規模事業者が協力し合い、それぞれのコミュニティーで物作りをしています。しかし、特に小規模事業者にとっては、GOTSの認証取得を目指そうとしてもサプライチェーン管理の複雑さと、認証にかかるコストの負担が認証取得の妨げになっています。CSCSはこの課題を念頭に考えられました。

 ――ここまでの経緯は。

 グローバル・スタンダードは年に一度、GOTSの設立団体(JOCA=日本オーガニックコットン協会=を含む4団体)を集めてアドバイザリーカウンシル会議を開いています。21年に私はJOCAとともにCSCSの概要を提案し、了承されました。

 日本独自の産業構造に対する理解もあったと思いますし、なるべく無駄のない小規模な物作りをしている事業者にGOTS認証を取得してほしいという期待もあったのだと思います。そこからプロジェクトをスタートし、1年の準備期間を経て22年夏から三恵メリヤスのグループが1年をかけて実証(パイロットプロジェクト)に取り組みました。

パスポートと捉えて

 ――初の取り組みで苦労もあったはず。

 約50社と面談しましたが、GOTS認証に興味はあっても前例がないので最初の一歩を踏み出せない事業者が多かったです。認証取得事業者はGOTSに対する理解があっても、全サイトの事業者に理解を浸透させるのがたいへんだという声もありました。理解を促す目的でデジタルラーニングツールも作りました。

 ――三恵メリヤスのグループの印象は。

 「海外に売りたい」「Tシャツで勝負したい」という強い心意気を感じました。どの事業者もサプライチェーンに関わる企業との間で信頼関係を築いて物作りをしていると思いますが、三恵メリヤスは強いリーダーシップで強い関係性を築いているという印象を持ちました。それがベースにあってグループでGOTSやCSCSについての理解を浸透させた。これが認証取得につながった大きな理由の一つだと思います。

 ――今後について。

 2回目の監査も終わったようで、認証取得が継続しています。昨年に1回目の監査を終え、その結果を踏まえて今年は何がどのように改善され、何が足りないのかが明らかになってきていると思います。監査を担う認証機関とのコミュニケーションもしながら、CSCSが適切に運用されるのかどうかの検証が進められていることでしょう。

 三恵メリヤスのような会社は日本にまだあるはず。海外を見据えた市場開拓は、日本の繊維産業の継続的な発展にもつながっていくと思いますので、そのためのパスポートのような道具としてGOTSを捉え、活用してほしいと思っています。

■西野祐子さん アパレル業界で26年勤め、そのうち約10年間は日系の大手アパレルメーカーでCSR(企業の社会的責任)業務を担当。縫製工場を中心に繊維産地企業と関わりを持った。エシカル(倫理的)な活動を推進する団体や服飾専門学校の広報を経て、19年からJOCAを通してグローバルスタンダードに参画。23年に同パイロットプロジェクトをやり遂げた。

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(繊研新聞本紙24年10月31日付)

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