21年春夏デザイナーコレクションは、サステイナブルな取り組みを具体的に発信するデザイナーが増えた。生分解性ナイロンや再生デニム、ニットのアップサイクルなど素材の種類が増えただけでなく、サステイナブルな素材の使用割合を表明するブランドも出てきた。生産や流通のあり方を考え直したブランドもある。ファッションウィークは、クリエイションを発表するとともに、ブランドの考え方を伝える場に進化し始めている。
(青木規子、写真はブランド提供)
21年春夏デザイナーコレクションは、コロナ禍の影響でデジタル配信が中心となり、プレスもバイヤーもいつもとは違う環境で新作をチェックした。そんな状況下における変化の一つが、サステイナブルな取り組みの増加だ。ロックダウン(都市封鎖)は自分自身の生き方や未来のあり方をじっくり考える機会となり、物作りに対する考えを深めるデザイナーが増えた。
コレクション期間中に21年プレスプリングコレクションをデジタル配信した「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリアもそんなデザイナーの一人。ウェアラブルな服を着たモデルが夜の街を闊歩(かっぽ)する動画とともに、サステイナブルな取り組みについて具体的な内容を伝えた。「コレクションに使われている無地の素材の93.5%はサステイナブルの認証を得たもの、またはアップサイクルされたもの。プリント地のベースは100%サステイナブル認証を取得している」という。これまでも取り組んできたことを、リリースで伝えて本気度を見せた。レザー商品のパーツをパッチワークしたスカートなど、アップサイクルした商品も象徴的だった。
若手の「マリーン・セル」も、パンデミック(世界的大流行)によって変化したブランドの一つ。ブランドらしさを全面に出した新作は、生分解性ナイロンやリサイクルモアレ、再生デニムといった素材使いが特徴となった。生産を欧州内で完結させるなど、生産体制も見直した。そういった動きに注目するバイヤーも多く、リステアの柴田麻衣子クリエイティブディレクターは「生地のストックの再利用、自国での生産背景の整備などサステイナブルマインドを持ったコレクションが気になった」という。
サステイナブルな取り組みをいち早く進めてきた「ステラ・マッカートニー」は今回、さらに一歩進み、ブランドの価値とビジョンを再定義するマニフェスト「AtoZ」を発表した。21年春夏のウェアのコレクションから、素材の調達方法、衣類の製造方法、コミュニケーション方法などブランドのあらゆる方針を、アルファベット順に表明した。例えば、AはAccountable(責任を持つ)、GはGrateful(感謝)、ZはZero Waste(ゼロウェイスト)といったキーワードとともに、意思を伝えている。デザイナーのステラ・マッカートニーは「少し立ち止まり、本当に重要なことは何かを考えました。これは私たちの価値観や活動、ブランドが目指していくことに責任を持ちながら、魅力的で持続可能なファッションを生み出していくために私たちを導いてくれるもの。目標などすべてが反映されています」と語った。
(繊研新聞本紙20年11月25日付)