ファッション消費回復の出口は? 景況・消費見通しアンケート調査から

2019/08/10 06:29 更新


サブスクリプションサービスの浸透は多様化するファッション消費の象徴の一つ。ストライプインターナショナルの「メチャカリ」は有料会員が1万3000人を超えた

 繊維・ファッション関連の主要企業を対象に、繊研新聞社は「ファッションビジネス景況・消費見通しアンケート」を四半期ごとに行っている。今年上半期(1~6月)のファッション消費は暖冬にたたられた昨年10~12月秋冬商戦からは改善したものの、停滞から抜け出せず、やや悪化傾向にあることが分かった。

 この先7~9月のファッション消費見通しについても、消費増税前の駆け込み需要に期待して「良くなる」とする企業が27%ほどあるが、それも一過性の「回復」に過ぎず、多くが反動減での相殺を予想している。ファッション消費回復の出口はあるのか。

(青木修治)

落ちた〝優先度〟

 1月の調査で、昨年10~12月のファッション消費が前の四半期に比べ「悪くなった」企業が約4割と高率だったのに比べ、4月調査では今年1~3月にさらに「悪くなった」企業は13%どまり。しかし直近の4~6月になると1~3月に比べ「悪くなった」企業が2割に再び増加している。4~6月は、改元や10連休というまたとない好条件に消費の後押しを期待する向きもあったが、この結果。1~3月、4~6月ともファッション消費は「変わらない」とする企業が7割超を占めるものの、相当数の企業が「厳しい状況が変わらない」という意味合いの答え。

 今年実施した3回のアンケートへの書き込みに通底しているのは、以前に比べて優先度が落ちてしまった消費者のファッションへの価値観変化を背景に、「中長期的に見てファッション消費、特にアパレル消費が上向く要素がない」との冷徹な将来認識だ。

 ファッション消費が悪化または上向かない理由を尋ねると、米中はじめ各国間の貿易摩擦や方向性が定まらない株価の変動など景気全般の停滞、消費全般の低迷を挙げる企業がある。実際、総務省の調査で消費マインドの強さを示す消費者態度指数は、6月まで9カ月連続下落となっている。


今も天候次第

 衣料品では天候不順に左右される度合いも大きい。記録的な冷え込みとなった17年10~12月商戦では4割近い企業がファッション消費が「回復している」と答えたのに対し、18年10~12月商戦では一転して暖冬に足を引っ張られ、4割近い企業が「悪くなっている」と答えている。

 一方で、消費全般の動向や天候要因とは別に、長期的傾向としてファッション消費優先順位の低下や、社会全体のデジタル化に伴う新しいサービスの登場が促す消費行動の変化、旧来のファッショントレンド追随型消費の縮小など、消費者の変化を理由に挙げる企業も多い。

 デジタル化の進展はECの浸透、2次流通の急拡大やサブスクリプション(月額定額制)サービスの勃興など、所有から共有へとファッション消費行動のさらなる多様化を招く。これらの新しいサービスの拡大は、既存のSCや百貨店、専門店など実店舗主力の小売業にとっては、いずれも競合対象となってくる。消費者のニーズに対応して、小売業自らこうしたサービス事業を立ち上げるケースも出てきている。

 被服及び履物の1世帯当たりの年間消費支出額(農林漁家を除く2人以上の世帯)は、91年の約30万2000円をピークに下がり続け、16年にはピーク時に比べ54%減の約13万9000円まで低下している。しかし、ファッションは被服や履物に限定されるものではない。消費者の生活全般にあるはずのファッションニーズを掘り起こす商品やサービスの開発、デジタル技術を活用した利便性の高いサービス提供方法を見出すことが求められている。

(繊研新聞本紙19年7月8日付)



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