《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「ユキヒーロープロレス」 ヒーローへの憧れを共通項に

2024/03/29 06:26 更新


渋谷スクランブルスクエア9階「スクランブルブックスアンド」で開催したポップアップイベント

 プロレスとファッションを融合した「ユキヒーロープロレス」は、子供の頃からプロレスとヒーローに憧れていた手嶋ユキヒロさんが12年に始めたアパレルブランドです。国内外への卸売り、直営店と催事、自社EC、越境ECモールで販売しています。男女を問わず、30代から50代を中心に幅広い層に受けています。

一緒に盛り上げる

 今年3月、渋谷スクランブルスクエアで開催した全日本プロレスとのコラボレーションイベントは、手嶋さんが企画して声をかけて実現しました。自社商品や全日本プロレスのグッズを販売するほか、ジャイアント馬場さんが使っていたリングシューズやチャンピオンベルト、マジンガーZとのコラボマネキンなども展示。毎日、夕方に選手が一人、店頭に立って接客やサインに応じ、手嶋さんと選手のトークセッションも行って来場者を楽しませます。過去には、ラフォーレ原宿でプロレスの試合をイベント的に行い、ファッションビルという異色の場所に、来場者も選手も喜んでくれました。顧客やプロレスファンとつながって、一緒に盛り上げていきたい思いがあります。

渋谷スクランブルスクエアのイベントでのプロレスラーの宮原健斗さんのコスチューム展示。マネキンはマジンガーZとのコラボレーションで製作したもの

 顧客との接点の中心は、プロレスの聖地、後楽園ホールがある東京・水道橋に17年4月に開いた直営店「レブリチャル」です。リピーターが多く、ホールの試合の前後に来店する方、関西からわざわざ買い物だけに来る人もいます。直接会って話を聞けて「自分たちの店を運営することが本当に楽しい」と手嶋さん。プロレスのリングの形をしたハンガーラックをはじめとしたオリジナル什器、熱い思いのこもった手書きのPOP(店頭広告)など、来店者に楽しんでもらう工夫が随所にあります。

格闘技の聖地「水道橋」にある直営店「レブリチャル」

職人もヒーロー

 プロレスラーやプロレス好きの芸能人が気に入って私服で着てくれたり握手会やユーチューブで着てくれたり。プロレスをリスペクトする気持ちが細部にまで感じられる、丁寧な服づくりも大きな魅力です。「工場へ行くのが好き」という手嶋さんは毎シーズン、産地に足を運んでオリジナル素材を生産し、糸から作ることもあります。ブランドにとっては、高度な技術を持つ職人や工場もヒーローです。「7年着ても刺繍の糸が切れなかった」といった顧客の声を職人に伝えます。フィードバックに職人も喜んでくれ、コミュニケーションを重ねて信頼関係を築いています。

ユキヒーロープロレスのブランドコンセプトは「誰かのヒーローになれる服」

 また、始めた当初から、プロレスラーのコスチュームや記者会見用のスーツも制作しています。最近はキックボクシングなど他の格闘技選手のコスチュームも手掛け、今年は阪神タイガースとの協業商品も発売するそうです。デビューから10年を超え、知識や経験、出会いも増えて、本当に楽しくて、「今のスタッフとずっと一緒に仕事を続けていきたい」。熱意を持った活動が周りの人を巻き込み、成長を促しています。

阪神タイガースとユキヒーロープロレスのコラボTシャツ

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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