《検証・私がつくるファッションの明日》次代の主役たち 元日号登場の若手経営者の1年後を追う

2021/12/31 06:30 更新


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 今年元日付の繊研新聞新年特別号では、「私が作るファッションの明日」をテーマに、ファッション業界の若い担い手たちが登場した。自分たちなりのやり方で顧客や社会との向き合い方をアップデートし、閉塞感を打ち破ろうとする姿勢を紹介した。ネットビジネスを軸にする事業の多角化を狙うドットワンの藤井亮輔CEO(最高経営責任者)と、個店を磨き続けるワガママトウキョウの中村勇貴オーナーに、この1年を振り返ってもらいながら、次に考えていることを聞いた。

(藤川友樹、大竹清臣)

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ドットワン 藤井亮輔さん

飛躍へ基盤作りの年 働き続けられる企業に

 20年8月に「エイミーイストワール」をMBO(経営陣による企業買収)して事業を本格化させたドットワン。コロナ下で迎えた2期目の今期(22年7月期)を「一気に成長するための基盤作りの年」とする。人材採用を進めて組織を強固なものにして、来年以降の新規事業で弾みをつける。

21年1月1日付新年号より

 現在運営するのは「エイミーイストワール」(開始は16年7月)、「クレドナ」(20年9月)、「アニュアンス」(21年1月)の3ブランド。年間売上高はエイミーイストワールが30億円の水準を維持、アニュアンスは初年度15億円の見込みだ。

 各ブランドとも売り上げの8割以上をECで稼ぎながらも、一等地と呼ばれる駅ビルや商業施設などに店もある。出店は徐々に広げる方針だが、「プロパー消化率90%、シーズン在庫消化率95%以上を確実に維持」することを最優先にして、この1年はコロナ下の慎重な消費を踏まえて新規出店は控えた。

 「店を増やせば40億~50億円は狙えるが、在庫消化率が下がりセールが増えては意味がない。ブランド価値や顧客の熱量の維持が難しくなり、利益や従業員への還元も少なくなる」。お客と濃密な関係を作り、ブランドを買い続けたいと思ってもらえるための需要を見極める姿勢は変わらない。

 慎重な消費は今後も続くが、「この2年で消費者は疲弊しており、どこかで反動がくる」と来春以降は出店を再開する。

 出店している地域ではEC売上高も大きく伸ばしており、ブランドの成長を加速する。ただ相乗効果の発揮には「質の高い接客・サービスを保つこと」が必須として、目の届く範囲内での限定的な出店にとどめる。「販売スタッフに顧客満足を提供しましょうというのは簡単だが、モチベーションやコンディションが低ければそれは成り立たない」という。

 新ブランドも毎シーズン出す方針。ファッションにとどまらず、ビューティーやフィットネス、ゴルフ、飲食や空間提案など様々な領域で検討中だ。それにはブランドポートフォリオの拡充だけでなく、「一つの企業の中に様々なキャリアプランを揃え、より夢や目標を持って働けるようする」狙いもある。

 客から選ばれる企業になるには、従業員満足やモチベーションが前提と見て、長く働き続けられる企業を目指す考えだ。

ドットワンの藤井亮輔CEO

ワガママトウキョウ 中村勇貴さん

「狭く濃く深く」貫く」 来店予約で販売大幅増加

 東京・渋谷の奥の路地に構えるメンズセレクトショップ「ワガママトウキョウ」を昨年11月、完全来店予約制に切り替えた中村勇貴オーナー。売上高が前年の6000万円から大幅に伸び、今期(1~12月)は1億円を見込めるほどに成長した。

21年1月1日付新年号より

 来店予約制はコロナ下だから実施したわけではない。3年前に開業した当初から考えていたことで、中村オーナーが考える理想的な店舗運営だった。それがコロナ下の感染防止対策とも合致するなど、時代の後押しによって定着が加速した。

 そもそも同店は八方美人的な品揃えや接客とは縁遠いスタンスを貫いてきた。中村オーナーの感性に共感するコアでニッチな服好きが対象。以前から来店の敷居は高くしており、ふり客もほぼゼロだったため、予約制への移行は自然な流れでもあった。

 来店を予約制にすることで、「他の客を意識せず、焦らずじっくり洋服と向き合えると顧客からも好評だ。社交辞令的なあいさつなど省略し、いきなり商品の話に入るなど濃度の高い接客も満足度が高い」と強調する。

 来店客の買い上げ比率は9割以上と圧倒的だ。通常営業だったころは来店客がゼロの日もあったが、予約制であれば時間もフレキシブルに対応可能。予約がない時間は他の作業に集中でき仕事の効率も上がる。

 「コロナ下が続き、外出する服の需要とともに消費者の収入も減るため、ファッション市場では中間価格帯の商品がさらに厳しくなる」と見ている。二極化がますます進むなか、「自分の感性で深く掘り下げることが大事」という。

 限られた客層にリーチするためにもSNSなどデジタルツールの活用は欠かせない。インスタライブは週3~4回実施し、固定客に加え、新規客の獲得につなげている。

 「来店のハードルが高いからこそ、服の質感をもっとリアルに伝えたい」との思いから、ユーチューブでも配信するライブ動画はカメラに新規投資し、4K画質に向上させた。

 自店の立ち上げから3年で売り上げ1億円が見えてきた。「業界に大きな実績を残した有力者でもない、無名の自分が成功できたのだから、若い世代も夢が持てる業界のはず。誰かに憧れると、その人を超えられないので、生意気なくらいの気持ちで自分のやり方でチャレンジしてほしい」と次世代の台頭に期待する。

ワガママトウキョウの中村勇貴オーナー

《振り返って》新たな芽は着実に成長

 元日の新年特別号では、今回登場したお2人のほか、ユトリ社長の片石貴展さん、スパイバー取締役兼代表執行役の関山和秀さん、レディ・トゥ・ファッション代表の高野聡司さん、ユーチューバーのかんだまさん、やまと社長の矢嶋孝行さんを取り上げた。

 この1年で大きく飛躍した人も多い。例えば、かんだまさんは服の楽しさを伝えるユーチューバーの枠を超え、ユナイテッドアローズが9月に開始したウィメンズの新レーベルのディレクション、商品企画・監修を担うようになった。また、スパイバーの関山さんは大型資金調達を実現し、人工のたんぱく質素材を「必ず普通の素材にする」と意気込む。

 転換期のファッションビジネス業界の新たな芽は着実に成長し、実になりつつある。旺盛な新陳代謝を促し、産業の活力を取り戻すため一つの要素と捉え、繊研新聞でも引き続き“次代の主役たち”をウォッチしていきたい。

(藤川友樹)

《予告》22年新年号特集

 来年1月1日付の新年特別号の《巻頭特集》は「みんなで作るファッションの明日」。

 “私が作る”という熱い思いを抱いたその先では、より価値観の近い者同士がチームのように集まり、“みんなで作る”ムーブメントが巻き起こっている。顔の見えるフラットな関係性を基盤に、したたかな物作りや独自のクリエイションを掛け合わせ、ファッション市場に新たな風を吹き込む――持続可能で公正なビジネスを志向するファッションの明日が見えてきた。

 《新春対談》では人気の「ザ・リラクス」、彼らを加工技術で支える小松マテーレ。両社のキーパーソンが登場し、「出会ったきっかけ」「対等の関係作り」「技術で進化するデザイン」などを語り合う。

 さらに「アンリアレイジ」やレディスブランド「ネストローブ」など注目の企業やブランドを追う。


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