【記者の目】戦略的提携が進む総合アパレル

2018/11/23 06:45 更新


 総合アパレルメーカーにおいて外部企業との業務提携による事業領域の拡大が進展している。提携する相互の得手とする経営資源を共有化することで、業績拡大の相乗効果を発揮することを狙ったものだ。

 他社との長期的な視野を持った協働事業は、従来の事業展開における自前主義から脱皮する契機にもなり、企業体として多様性を確保することにもなる。

(北川民夫=本社編集部レディスアパレル担当)

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共同で複眼思考に

 オンワードホールディングスとストライプインターナショナルはファッション分野における戦略的パートナーシップを9月に本格スタートした。百貨店向けのF2層(35~49歳女性)を主力とするオンワードと、SC向けのF1層(20~34歳女性)を主力とするストライプは、包括的な業務提携を通じて、それぞれの得意分野を生かしたシナジーを目指す構えだ。

 両社がそれぞれ運営するECモールに双方の基幹ブランドを9月5日から相互出店。両社の主力ブランドの顧客基盤を活用しながらオンラインでの共同販促を拡大する狙いだ。

 海外生産における工場監査についても、両社がそれぞれ行っていた縫製工場のCSR(企業の社会的責任)やQC(品質管理)の監査を共同で行い、合理化する。オンワードパーソナルスタイルが販売するオーダーメイドスーツブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」のレディススーツでは、ストライプの実店舗とEC販売での顧客データを基に、客を誘導する。

 ストライプの石川康晴社長は「まずは1、2年で生産背景、工場監査、EC事業の三つの分野で合計100億円規模のシナジーを出す。特にオンワードは自社工場から委託工場まで様々な生産工場を持っている魅力がある」としている。

 さらに両社は「日本版スマートストア・プロジェクト」を立ち上げた。通常店舗と異なる完全予約制で、来店予約のある日時のみ運営し、販売スタッフが常駐しない販売形態を採る。マーケットプレースという位置づけで他社ブランドも含めて品揃えする。デバイスやAI(人工知能)、クラウドを持っている多様なテクノロジー企業にも参画を募りながら新しい概念のプラットフォームを確立する。収益性が確認できれば、出店を加速するため両社によるジョイントベンチャーで新たに会社組織を立ち上げる構えだ。

 オンワードの保元道宣社長は「一般的に一企業では固定観念に陥りがちになる。ストライプは企業としての成り立ちは異なる面はあるが、逆にそういった企業と共同して、一緒に未来を作っていくことで複眼思考による柔軟な発想が持てると判断した」としている。

生産、EC、スマートストアなど多岐にわたる戦略的業務提携を打ち出したオンワードホールディングスの保元社長(左)とストライプインターナショナルの石川社長

上場を契機に加速

 9月28日に東京証券取引所市場第一部へ上場したワールドは、今期スタートした新・中期ロードマップの事業方針「ファッション業界における総合サービス企業グループへの進化」を加速する。

 9月6日に東証第二部に上場したナルミヤ・インターナショナルの株主順位の第2位となったワールドは、物流や販売、ECなどデジタル分野での共同事業を具体化する。共同配送やワールドのプラットフォームを活用したEC、子供服のマーケティングなどが共同事業の対象だ。

 ワールドは今年6月にも、クラウドファンディングプラットフォーム「キャンプファイヤー」を運営するキャンプファイヤーと資本・業務提携を締結している。同社の資金調達や個人・企業・自治体とのつながりを、ワールドの持つ生産機能やサービスを掛け合わせることで「ファッション産業全体の活性化につなげる」考えだ。今春には投資事業で、キッチン雑貨専門店などのアスプルンドを子会社化したほか、ユーズドのティンパンアレイを子会社化し、ファッションレンタルサービスのオムニスと資本業務提携して2次流通市場に参入するなど、事業領域を拡大している。ブランド事業の成長を進めながら「グループ全体としてプラットフォームやデジタル、EC事業の利益構成比を高める」構えだ。

 業務提携による事業領域の拡大を進める大手総合アパレル。市場拡大や収益率を伸ばすうえで、既存市場での成長には限界があるという場合、外部企業との業務提携を通じて、新規事業の開発を推進するのは有効な手段となる。その際に必要なのは「自社のコアコンピタンス」を見極めること。既存事業で抱える人材や設備、システム、技術などのリソースや事業モデルをどう位置付け、相手先との業務提携の際に、いかに適合するように生かすのか。今後の動きに注目したい。

(繊研新聞本紙10月1日付)

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