【記者の目】地方・郊外店の縮小が続く大手百貨店

2017/12/11 04:29 更新


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三越千葉店は17年3月に閉店した

 百貨店の存在意義が問われている。大型SCやECとの競合で売り上げ減が続き、百貨店総売上高は16年度に6兆円を割り込んだ。特に深刻なのは地方・郊外店だ。ここ1~2年で売り上げ減による収益の悪化が急速に進んだ。大手百貨店は都心店で利益を出して、地方・郊外店を補う構図が大きく崩れた。再生に向けた処方箋(せん)は一つでないが、規模縮小や業態転換など事業の選択と集中が一気に広がっている。

(松浦治=東京編集部百貨店担当)

一等地の前提が崩壊 

 三越伊勢丹は伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)を18年3月に営業終了することを9月末に発表した。同店は08年度から赤字が続いており、将来的に収益が改善するメドが立たないと判断した。13年に10億円を投じて全館改装を実施し、店舗面積の2割に専門店を導入した。地方・郊外店の運営モデルを構築しようとしたが、業績は好転しなかった。

 店舗の存続を巡って、松戸市は4階に公共施設を入れて、テナント料として10年間で21億円を支払う支援策を検討していたが、9月定例市議会で否決された。規模を縮小することで営業継続を目指したが、営業継続を断念した。

 そごう・西武は西武船橋店と西武小田原店を来年2月で閉鎖する。16年2月の春日部、9月の旭川、柏、17年2月の八尾、筑波に続く店舗閉鎖となる。そごう神戸店、西武高槻店を10月1日付でエイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡したことから、店舗数は15店に縮小する。

 地方・郊外店の苦境は顧客ニーズの変化に対応できていない内的な要因だけでなく、商圏の急激な変化がある。「百貨店は街の中心に立地し、周辺の人々のニーズを満たす物販、サービスを提供する役割がある」(杉江俊彦三越伊勢丹ホールディングス社長)という在り方は前提から崩壊しつつある。かつての一等地は商店街が疲弊し、通行量が激減した。

自営縮小し要員を効率化 

 高島屋は16年度、米子高島屋で20億円の減損損失を計上した。米子市に東館と立体駐車場ビルを無償譲渡したためで、百貨店を1館体制にして面積を縮小することで、17年度は黒字転換する見通しだ。

 地方・郊外店で自営部分を縮小し、コスト引き下げに着手している。すでに港南台店は大型家具専門店ニトリを導入して6層から4層へ減らしたほか、泉北店は今春に5層から4層へ縮小した。立川店は15日、4、5階の6000平方メートルにニトリを導入するほか、商業不動産を手掛ける東神開発と上層階などを一体運営する。泉北店は要員65人を大阪店や堺店に、立川店は今秋に50人を新宿店などに再配置した。

 17店舗のうち赤字は昨年上期の7店舗から今上期の2店舗へ減少した。いずれも運営コストを下げて、収支バランスが改善した。「収支を均衡させて事業を継続するため、あらゆる施策を行う」(木本茂高島屋社長)という。

 そごう・西武は今春、西武所沢店で食品売り場を1階に新設し、既存の地下1階と合わせて2層化した。店舗売り上げに占める食品の構成は元々、3割に達しており、強みの食品をさらに強化することで店舗の活性化に結び付ける。「次はレストラン街をグループの知見も入れて改装する。縦の誘導を強めたい」(林拓二そごう・西武社長)と足元商圏の来店頻度を高め、首都圏郊外型の店舗モデルを構築する。

 首都圏郊外店では「支店は今までミニ新宿を作ってきてしまったのが一番の反省点」(杉江三越伊勢丹ホールディングス社長)と地域によってMD、サービスを変える考えだ。地方・郊外店をひとくくりにせず、店舗の特性に合わせて、日常性を前面に出したMDや上質な商品やサービスといった最適な組み合わせを検討する。

基幹店の商品調達力活用 

 強みの外商を生かした取り組みに着手する三越伊勢丹は新宿、日本橋の基幹店が調達したラグジュアリーブランドなど高額品を地方店の外商顧客に対して、巡回して販売する。松山や高松でスタートし、各地域店に広げる。

 同様に外商拠点である千葉の小型サロンは三越日本橋本店の店頭とネットでつないで、リアルタイムの中継画像を通して接客販売する試みを始めた。「今ある商品だけではシュリンクしてしまう」(杉江三越伊勢丹ホールディングス社長)と基幹店の商品調達力を生かす。

 大手百貨店は中期計画で不動産などを新たな収益の柱とした脱・百貨店戦略を強めている。確かに従来の百貨店業態に固執するだけでは、今の苦境を抜け出すのは難しい。

 この間の要員配置の効率化による人件費や地代家賃の引き下げなど経費削減は限界がある。再生の処方は一つではない。

 地域ニーズを取り入れたカテゴリーの編集、外部と連携した新たな業態開発など従来の枠にとらわれない新たな百貨店モデルへの転換が必要だ。ECと共存し、百貨店の優位性が出せる新たな業態開発も避けられない課題となる。

17年度の大手百貨店の主な店舗閉鎖(予定含む)

  • 17年2月 西武八尾店、西武筑波店
  • 17年3月 三越千葉店、三越多摩センター店
  • 17年7月 堺北花田阪急
  • 18年2月 西武船橋店、西武小田原店
  • 18年3月 伊勢丹松戸店


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