大貫達正さんがデザイナーを務めるジーンズ主力のカジュアルウェアブランド「ウエストオーバーオール」は25年秋冬、桐生ジャンパー研究所と協業し、桐生伝統の横振り刺繍技術を生かした商品などを出す。
「ファッションビジネスは今でも大量廃棄を続け、業界では大切な伝統技術も消えかけている」と大貫さん。ブランド立ち上げから8年が経ち、「デニムを通して伝統技術の継承やメッセージを込め、有意義な役割を持ったブランドとして育てたい」という。
日本人の感性生かす工場長に
ウエストオーバーオールの原点は欧米などの西部文化にあり、胸部のビブ部を外した形にある。原点に立ち、ジーンズを作業着からファッション商品に、ファッション商品から工芸品に変えた日本人の感性とこだわりを生かし「デザイナーではなく、これらを生かせる工場長になりたい」と思いを語る。
25年秋冬物は8カテゴリーに分けて商品企画した。アイテムはジャケット、Tシャツ、パンツ、キャップが中心。デニムは岡山と中国製。岡山では本藍染めした綿7番単糸使いの12オンスデニム。中国では耳にブランドネームを織り込んだ13オンスセルビッジデニム、8オンスデニム、コーデュロイなどを作る。

職人技をふんだんに取り入れ
カテゴリーの一つ目は、本藍染めのブルーで表現するウエストジーンズ。ボトムはストレート、スリムテーパード、フレアの3型。1930年代のカバーオールをベースにしたデニムジャケットとトラッカージャケット。ボトム税抜き3万2000円。ジャケット4万8000円、5万円。
二つ目は、桐生の横振り刺繍技術を取り入れたウエストビンテージ。スーベニアリバーシブルジャケットは8オンスデニムをベースに伝統的な横振り刺繍技法、キルトステッチ、コード、リブに至るまで当時の製品を解析し、「後世に残したい技術をふんだんに取り入れた一着」だ。戦後間もない頃のスーベニアジャケットが作られた刺繍の型を使用し、ネイティブアメリカン柄やウェスタン柄などを描く。コーデュロイの6パネルキャップには横振り刺繍でロゴマークなどを描く。キャップ9000円。ジャケット9万8000円、10万円。
三つ目は14ウエル の細畝のオフ白コーデュロイを使ったウエストメモリー。80年代、米国の大学生が卒業記念に描いた落書きなどメモリアルをプリントする。
このほか、硫化染めデニムにダメージ加工したクレイジーパターンのウエストブラック、オーガニックコットンの空紡糸を使った丸胴編みのTシャツ、西部と中国の融合を表現した商品などがある。
桐生ジャンパー研究所によると「スカジャンは、創成期にはそのほとんどが群馬県桐生市で作られていた。世界でもここにしかない貴重なもの。しかし、その灯(ひ)が消えかけている」。桐生ジャンパー研究所は「その系譜を受け継ぎ、後世に残す」ために17年に活動を開始した。
同ブランドはドリームワークスグループ(東京)が保有し、カジュアルウェア製造卸のドリームワークスが運営している。商品はユニセックス。販路はセレクトショップ中心で、25年秋冬物の店頭投入は7~10月を予定する。
