20~21年秋冬デザイナーコレクションは、いつになく静かなまま終了した。新型コロナウイルス感染の影響が徐々に広がり、各地のファッションウィークに影を落とした。
ミラノでは最終日のショーが中止となり、パリでもいくつかのブランドが取りやめた。中国からの来場者は限定され、日本のショップやメディアも渡航を自粛し、今後のビジネスへの影響は避けられなくなった。しかし、そんな中でも、デザイナーたちは淡々と新作を競い合った。
(小笠原拓郎編集委員、写真=大原広和)
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スタイル
前シーズンのビッグトレンドとなったシンプルなスタイルが、引き続き重要だ。シンプルなラインに官能的な要素を加えるのが秋冬のポイントといえる。マスキュリンなテーラーリングを軸にしたスタイルも、再び脚光を浴びた。ツイードやウールヘリンボーン、英国調のチェックを生かしたテーラードスタイルを取り入れたラインだ。
ウエストからボーンを使ってフレアラインを作るクラシックスタイルも継続している。そのエレガンスをいかにモダンに仕上げるのかが課題だ。70年代のフレンチエレガンスと80年代のロックの要素も大事になる。

アイテム
マスキュリンやクラシックを背景にアウターが充実した。テーラードジャケットやコートとともにケープのバリエーションが広がった。ドレスは体に沿ったシースラインとストレートラインが軸。レイヤードで見せるテントラインのドレスやマキシ丈のドレスも登場している。
セットアップも増えた。共地やプリントのセットアップのほか、チュニック丈のトップと合わせたセットアップもある。ビクトリアンカラーなどのクラシックな装飾を入れたブラウスも目立った。
ディテール
シンプルなアイテムが多い中で、ディテールで変化をつけるシーズンといえる。とりわけ目立つのが肩から袖にかけての装飾。ショルダーにギャザーを入れて立体的な袖付けにしたり、袖を大きく膨らませたディテールが多い。ケープのように肩を柔らかく包み込むラインも増えた。もう一つは、布の動き。フリンジやストリングス、チェーン刺繍などで、シルエットに動きを作るのが特徴だ。
素材
アウターでは、ウールの英国調の柄が復活している。ヘリンボーンやハウンドツース、グレンチェック、重厚なツイードの杢グレーなどが増えた。クラシックなドレスを彩るのはベルベットやジャカード、ブロケード。モアレやタフタの張りのある素材も目立つ。レザーはアウター素材としてだけでなく、ビュスティエなどの官能的なアイテムにも使われる。チュールやオーガンディなど透け感のある素材も継続トレンド。
色・柄
コレクションの終盤になって、やはり黒が重要な色として広がった。エレガンスを象徴する色であるとともに、どこかダークなムードも取り入れられる。黒との関係で、白やエクリュも重要なカラー。強い色では赤も目立つ。こうした原色とともに、ダスティ―なペールカラーも増えた。ピンクやブルー、イエローやグリーンに少しくすんだトーンを加えた色だ。柄は、全体的に控えめなシーズン。しかし、グラフィカルな抽象柄やレトロなフラワー柄、ドットやスクエアなどの柄が出ている。
デザイナー
ファッションの楽しさをいかに表現できるかが課題となった。「グッチ」はバックステージまでを開放し、物作りの裏側にある職人やスタッフの努力とともにファッションをたたえるコレクションを見せた。「ロエベ」はアートやクラフトを背景にしてファッションとアートとの間で新しい美しさを描いた。「ドリス・ヴァン・ノッテン」は80年代の英国のクラブカルチャーが持っていた自由な精神を後景に、ファッションの楽しさを描いた。

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