前回は、購入型クラウドファンディングを中心に、市場成長の背景を書きましたが、今回は購入型の「マーケティング」としての活用方法や具体的なメリットについて、詳細にお伝えしたいと思います。
まずは、開発を検討している新商品の事業性や顧客の反応を事前に検証するテストマーケティングとしての効果です。
商品を開発する前の段階で支援を募ることで、検討中のアイデアや企画に対してどの程度の支援、即ち「予約購入」がされるか、また支援者がどのような属性や特徴を持つセグメントなのか等を把握し、開発を進めるべきか否かの判断材料となる貴重なデータや示唆を得ることができます。
実際に、目標金額まで支援が集まった場合のみ開発に着手し、目標に達しなかった場合は開発に着手しない、という活用も可能です。また、複数のアイデアや企画がある場合や、価格やデザイン/カラーなどで複数の候補がある場合に、クラウドファンディングの結果を元に案を絞り込むこともできます。
このように、従来のリサーチやアンケート調査などでは実現できなかった「実際にお金を払って購入するかどうか」という事業の成否を分ける重要な観点において、より実態に近い顧客の反応を検証することで、成功確率の低い新商品の開発におけるリスクを低減することができます。
また、購入型はプロモーションやPR強化にも大きな効果があります。
既に販売が決定している商品であっても、先行販売/予約販売の形でサイト上でプロジェクトを掲載し、そのコンセプトや商品詳細を開発の背景やストーリーなどのコンテンツと共に発信して親和性の高いメディアで取り上げられる可能性を高めたり、SNSを通じて発信して拡散を狙うことで、より多くの人に認知され、共感や支援を得る機会を作ることができます。
支援者は初期の顧客として重要な存在となり、商品や企業のファンとして貴重なフィードバックを与えてくれたり、ポジティブなクチコミを広げてくれる可能性もあります。また、クラウドファンディングで目標金額を達成すること自体がポジティブなニュース性を持ち、さらに多くのメディアに取り上げられたり、その商品を取り扱いたいという販売チャネルからの引き合いを生み、販路拡大につながることもあります。このように、購入型にはマーケティング手法として多くの効果が期待できます。
その他にも、事前に販売数を把握することによって在庫リスクを軽減したり、支援金を得てから開発に着手することで通常の開発・生産のプロセスよりも大幅にキャッシュフローを改善するなど、活用次第で様々なメリットを得ることができるのです。
次回は購入型クラウドファンディングのマーケティングとしての活用について、具体的な事例などを交えてご紹介していきます。
(北嶋貴朗・Relic代表取締役CEO)
