様々な企業やブランドがアニメなどとの協業施策を打ち出し、ファッションとサブカルチャーコンテンツの関係は日々密接になっています。そうした中、私たちの業界と近いようで遠いと思われてきたのが、キャラクターの衣装を着て楽しむ趣味、コスプレです。矢野経済研究所の調査によると22年のコスプレ関連市場規模は約270億円。SNSで100万人以上のフォロワーを抱え、インフルエンサーとして活躍するコスプレイヤーも少なくありません。今回は大手コスプレ衣装メーカー、コスパグループの松永芳幸社長にその歴史や物作りのこだわりを語ってもらいました。見えてきたのはファッション業界と同じ国内産地の疲弊などの課題、そしてメタバースの台頭で訪れたチャンスをどうつかむかといった、明日につながるヒントでした。
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歴史をたどる
熱量高かった黎明期
――コスプレ黎明(れいめい)期の時世は。
もともと私は社員数人でアパレルのOEM(相手先ブランドによる生産)が主力の小さな会社をやっていました。94年、わけあって同人誌即売会に行った時に、初めてコスプレをした人たちを目にしました。今ほど大規模ではありません。有志が手作りの衣装で楽しんでいました。ただ、その熱量に可能性を感じてコスプレのイベントを企画したんです。「コスチュームプレイダンスパーティー」、略してコスパ。今の社名の元です。
しかし、押さえていた会場が直前でクローズすることに。大急ぎで会場を変更するなど、準備はバタバタ。それでも600人以上の人が押し寄せました。改めて勢いを感じましたね。
イベントは回を増すごとに規模が大きくなり、私たちだけでは支えきれなくなっていきました。「とにかく同業者を増やして盛り上がりを受け止めなければ」という思いで、地方でイベントをやりたい人の相談にも乗り、ノウハウを共有していきました。
――衣装を作り始めたきっかけは。