せーの「#FR2」デジタル時代のブランディング㊦

2019/11/04 06:30 更新


《新成長の条件 せーの「#FR2」 デジタル時代のブランディング㊦》ECで買えない物に価値 石川社長に聞く

 海外での知名度・人気を獲得した「#FR2」(エフアールツー)が、ここ1年で強化してきたのが、そこでしか買えない土産物を扱う観光地特化型の派生業態だ。昨夏以降、#FR2梅(東京・原宿)、月桃(那覇)、柳(金沢)を出し、今秋は京都にも新店を開く。いずれも観光客の往来が盛んな一等地。小さな売り場で、大きく稼ぐ。

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観光地に商機あり

 派生業態は「ブランドの人気が出たから大都市に店を出す」なんていう古い考え方でやっていない。そもそも外国人がたくさんいる場所に、人気の#FR2があって、しかもECでは買えない商品が並んでいることに価値がある。旅行の記念にお土産を買うのと同じ感覚で買ってもらえている。だから観光地ビジネスと思っていて、店名に漢字を入れたし、看板のロゴも〝和〟の要素を意識している。

18年12月に那覇・国際通りに出した#FR2月桃。インスタグラムでの拡散を狙いネオンサインで目を引く

 おしゃれな場所に出したいわけじゃなく、観光客が大勢いるにもかかわらず、ライバルがいないからすごく効率の良い立地。店があることが重要だから、1坪でも良いと思っている。

 3店が成功して、世界の観光地でやっていける自信を得た。パリのエッフェル塔のたもとなんかに店が出せたら良いよね。

 「ヴァンキッシュ」の頃から同じだけど、常にマーケットインの発想でブランド・商品を作っている。「世の中がこんな風に変わる」「消費者がこんなことに興味を持ってる」ということをいつも気に掛けている。先を読んで、世に足りない物を作るから売れる。それが一貫した俺のやり方。

 これからのファッションブランドは、自分が好きな物を追求してニッチな世界でやっていくか、消費者を研究して売れる物を作っていくかの2択だと思う。今、「売れない」って嘆いている人は、格好をつけながら売ろうとしてる。本当に売りたいなら、もっとお客さんのことを見て、泥臭くやらないと。

コンテンツが大事

 プラットフォームビジネスでは、世界の先駆者にもう勝てない。日本はコンテンツビジネスでしか世界にいけないと思う。だから、自分たちにしかない価値をどう作るかが大事。

 毎日いろんなファッションニュースを見るけど、「AI(人工知能)を使ってどうだ」とか、みんな同じようなことをやってる気がする。時代の逆を行くから目立つし、前例のないことに挑戦するから勝てる。企業のステージによって必要な施策があるのだと思うけど、今売れていないなら、本当に力を入れるべきは仕組み作りじゃなく、コンテンツ作り。消費者が欲しい物を熱心に研究して、開発にお金をかけないと。お客は仕組みを求めてるわけじゃないから。#FR2にはコンテンツとしての将来性を強く感じている。アジア地域で一番人気のブランドになりたい。

「#FR2」でアジアナンバーワンブランドを見据える石川涼社長
(繊研新聞本紙19年9月13日付)


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