ネイルサロン「アクイユ」 スマホショルダーでネイルの技術を全国に

2025/03/17 12:30 更新NEW!


 「ネイリストの技術を生かした商品を、遠く離れた場所にいるお客様にも届けたい」。そう話すのは、東京・表参道、銀座、東中野に4店あるネイルサロン「アクイユ」代表の木村美穂さん。コロナ禍でサロンでの対面接客が困難な中、新規事業として20年から、ネイルの技術を生かしたハンドメイドのスマートフォンケースとストラップのブランド「ビジューバイアクイユ」を始めた。同事業により、ネイリストの在宅ワークを可能にするなど、女性が働きやすい職場作りも進めている。

(吉野光太朗)

前向きに捉える

 新規事業を考えるきっかけは、緊急事態宣言でネイルサロンの予約が激減したこと。ネイルは対面でしか施術できないため、ネイルサロン業界全体が厳しい状況に置かれた。社内にも不安が広がる中、「前向きなチャンスと捉えよう」と考えた。

 在宅でできるアクセサリー作りを始めた一方で、ちまたでスマホショルダーがはやっていることに着目した。「ネイリストの技術を生かせるのではないか」と考え、ビジューバイアクイユをスタートした。「サロンにとどまらず、ネイリストの技術を全国に届けられることにも可能性を感じた」と話す。

柏木綜合研究所 ビジューバイアクイユ事業部部長 木村美穂さん

 コンセプトは「スマホショルダーをファッションアイテムに」。透明の耐衝撃ハイブリッドケースに、ネイリストがジェルネイルで一点一点手描きでデザインする。ショルダーストラップも多くの種類を揃えており、服装や気分で付け替えたり、複数付けして楽しめる。ケースは税込み4320円から、ストラップ1100円から。当初はネイリストが予約の空いた時間にケースを製作し、ハンドメイドEC「ミンネ」で販売していた。

一点一点、手描きでネイルアートを施している
パールタイプやチェーンタイプなど、多くのショルダーストラップを揃える

 転機となったのが、22年10月に開催したルミネ立川での期間限定店。単日でネットでの販売時の1カ月分近く売り上げる日もあるなど、大きな反響を得た。そこから、専門の販売員や注文管理スタッフを新たに雇い、本格的に事業を始めた。

 23、24年は期間限定店の出店を積極的に行い、長期催事も含めて13回開催した。24年6月には東京・吉祥寺に路面店をオープンした。25年は2月から7月末まで千葉県舞浜市の商業施設イクスピアリに長期出店している。

働けるときに頑張る

 社員は社長を除き、全員女性。「これまでも女性が働きやすい環境を作りたいと活動してきた」と話す。現在、東中野の自社工房でケースの製作をしており、工房では近所に住む子育て中のネイル経験者の採用もしている。子供の体調などに予定が左右されることも多い中、「無理なく働けるように」と在宅勤務だけでなく2、3時間のみの勤務も認めるなど、柔軟に対応している。従業員には「働けるときに頑張ろう」という姿勢が浸透しており、「働きやすい」という声が上がっている。

工房でスマホケースを製作

 ビジューバイアクイユで今後、「仕組みを確立してネイル業界に新しい市場を作り、日本のネイル文化を世界に発信したい」と木村さん。「(女性は)制約の中で働かなければならないこともあると思うが、女性が活躍できるプラットフォーム作りを進め、新たな働き方を創出したい」と意気込む。

推し活人気を受けて推し色で作れるオーダーケースも販売している


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