フィリピンやインドネシアなど東南アジアを拠点にするストリートブランドが、日本のセレクトショップでビジネスを成長させている。デザイナーの多くは、グラフィックや映像、音楽などに関わり、BtoC(企業対消費者取引)を軸に現地でコミュニティーを築き、海外に卸売先もある。デザイナーブランドの貿易業務に携わるオブジェクトは、日本に進出したいブランドの依頼が増え、合同展「エースペース」を昨年立ち上げた。今年4月上旬には3回目を開き、9ブランドを紹介した。
(須田渉美、吉野光太朗)
一部の日本のバイヤーは、SNSや様々なイベントを通じて、東南アジアのストリートブランドの個性に注目しており、エースペースの今回の来場者は増えた。買いやすさよりも、欧米や日本とは異なる新鮮さに期待する。ブランド側は本国のファンへ日本にも扱い店があることで存在をアピールできるメリットもある。
「東南アジアのデザイナーの多くは、〝ださカッコイイがイケてる〟という考え方。クールに見せる欧米ブランドとは異なる魅力があって、グラフィックプリントもふざけたような感じが面白い」と話すのは、オブジェクトの小長井ジャスティン代表。ユーチューバーとして活躍するデザイナーも多い。「個性の強さを主張することよりも、人の心をどうくすぐるかが根本にある」。その気持ちが商品に反映され、日本の消費者を引き付けている。
代表例はフィリピン・マニラの「フォーチュン」だ。3月中旬からユナイテッドアローズ&サンズで扱いが始まった。ローンチパーティーには100人以上が来場し、仕入れた商品は約2週間で60%を消化したという。
クラブカルチャーに影響を受け、自らをコミュニティーブランドと称して、脳を擬人化した「ブレインマン」をアイコンにする。自社工場によるハンドクラフトのディテールも強みの一つ。5色の糸を撚ったレインボーステッチでキルティング加工したり、ジャケットの胸元に音の波長を表現したり。デニムのセットアップには、セルビッジ部分を生かしたフリンジをファスナーで取り付け、外して遊べる楽しさを提案する。Tシャツ1万8000円、パンツ4万円、アウター7万円。