ポルトガル靴・皮革製品工業会のAPICCAPSと、ポルトガル靴技術センターのCTCPは11月18~19日、靴産業の未来に向けた国際会議を開き、産官学で構築しているプロジェクトの経過を発表した。消費が大きく変わる中で、欧州の一大産地としていかに競争力を高めるか、テクノロジーを活用した解決策を見いだしている。
ポルトガルの靴産業は24年も7600万足を生産し、10年前とほぼ変わらない規模を維持する。90%以上は輸出で、機能的なカジュアル靴や安全靴などで培った技術力を強みに、欧州ブランドのスニーカーなど付加価値の高い分野で供給する体制も築いてきた。生産コストの安いアジア製品が席巻しているマスマーケットは競争に巻き込まれて続かない現実がある。
APICCAPSは、EU(欧州連合)製品として品質を担保できる産業集積地を目指し、23年にFAISTプロジェクトを立ち上げた。自動化、ロボット工学化、持続可能な生産などに取り組む企業に総額5000万ユーロ以上を投資して支援している。助成金ではなく、「国内の産官学が連携し、企業が抱えている一つひとつの課題をテクノロジーによって解決する」ものだ。45の企業が参画し、これまでに34の設備、20のソフトウェア、五つの生産ライン、15の資材や原料関連で新たな形を作り上げてきた。
一例を上げると、モールドソールの靴を自社で一貫性するカリテは、ソフトウェアの企業と組んで生産ラインの一部をロボットの作業に置き換えた。人の手作業は必須だが、その人手を確保するためにも「危険性の高い作業はロボットで補う」ことが経営的な効率を高める。社会の変化を念頭に「若い世代が働きやすい環境を整えていく」役目も果たしている。
(須田渉美)
