ここ数シーズン、カルチャーとしてファッションを打ち出すムードが目立った東京だが、今季は少し様子が違う。これまで、カルチャー切り口のアプローチを続けてきたブランドの間でも、より真っすぐに服そのものに向き合おうという意識が広がっている。(五十君花実)
バロック×グランジの強い女性像…アキコアオキ
15年春夏に、東京ニューエイジの枠でデビューしたアキコアオキ(青木明子)がさえている。バロックやロココのドレスを思わせる優雅な要素に、グランジやパンクのムードをミックスして、コンセプチュアルで強い女性像を見せた。これまでは多感な少女のようなイメージだったが、大人の女性になった印象だ。
肘から手先にかけて袖にボリュームを持たせたボウブラウスに、丸く肩を盛り上がらせたメンズスーツ地のドレス。ウエストはコルセットで細く締めあげる。一方で、スカートの裾は荒々しくスリットが入って、脚があらわになる。バラの花プリントのプリーツのラップスカートは、パンクのイメージにつながる。バロック×グランジや、ファッションを楽しむ自由でパワフルな女性といった要素は、今季のマインドのど真ん中に重なってくる。
コケティッシュなスクールユニフォームが印象的だったデビューシーズン以降、やや自分を探しているように感じ、東京ニューエイジの枠内にとどまり続けることを歯がゆく思ったこともあった。今季は「このままでは終われない」という意志を感じたコレクションだ。
ミキオサカベ(坂部三樹郎、シュエ・ジェンファン)は、ブランド10周年の節目となるショー。ここ数年、アイドルなどのカルチャーに寄せた発表を続けてきたが、前シーズンに続き、モードの王道に戻ってきた。
軸となるのはフォルムの変化、ショルダーラインの変化だ。襟やラペルの大きなクラシカルなノースリーブジャケットは、ずどんと重心の下がるビッグフォルム。ストライプのミニ丈のシャツドレスは、肩を大きく張り出して作る。セーターもパッドによって肩を極端に丸く盛り上がらせた。
スーツに入れたネコの柄の刺繍やジャカードニットなどは、ブランドらしいキッチュな感覚が漂う。変化球的な手法も楽しかったが、やはりこういう正攻法のアプローチを待っていた。
東京ニューエイジ出身のケイスケヨシダ(吉田圭佑)も、随分と意識の変化があったようだ。これまではムードを作ることにこだわって、肝心の服がやや置いてきぼりというような印象もあったが、今季は服に向き合おうという意志を従来より強く感じたコレクションだ。
メンズではなく、全てレディスを出してきた点も新しい。日本の学生服がベースになる。フリルやギャザーでボリュームを出したシャツに、ジャンパースカートを解体したようなベスト、レース素材のセーラーカラードレス。そこに、サイドスリットのスラックスや、ショーツとスラックスのドッキングのようなボトムを合わせ、ストリートの気分を交ぜていく。
ベルギーを拠点にするレナ・ルメルスキー(ヘレナ・ルメルスキー)も、ミキオサカベ、アキコアオキらとともにショーをした。彼女は、07年8月の東京コレクション中に行われた「ヨーロッパで出会った新人たち」展に、ヴェットモンのデムナ・ヴァザリアとのデュオで参加していた。
シャツやシャツドレスのスタイルに、フリルやフレアの量感、ビュスティエの官能的なディテール、細く絞ったウエストなどの要素で今の気分を取り入れていく。日本国内では、ドーバーストリートマーケットギンザなどで販売している。
ウィーク中にノクターン#22(鈴木道子)がアトリエでフロアショーを行った。裾を切りっぱなした白いシャツドレスに、太い袖の肘にざっくり切り込みが入った黒のロングジャケット。アシンメトリーに布が流れて、裾が泳ぐようなエプロンパンツやロングスカート。透かし編みニット、レース、ストライプの切り替え、プリント柄のパッチワークなど、様々な表情で見せていく。
モデルは結い上げてほつれたヘアに細い眉、おちょぼ口の口紅で、なまめかしさが日本風。ピアノの生演奏をバックに、ゆっくり静かに見せた。(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)