「藍屋テロワール」藤井健太さん 畑から自分の色表現

2020/05/03 06:30 更新


《ローカルでいこう》「藍屋テロワール」藤井健太さん 畑から自分の色を表現 藍の栽培から染めまで一貫

 デニム産地の広島県福山市で、藍の栽培から染料となる蒅(すくも)作り、藍染めまでを一人で一貫している若者がいる。「自分の色を畑から表現できるのは面白い」と話す「藍屋テロワール」の藤井健太さんだ。山あいの山野町に来て1年。自ら育てた藍で、その魅力を伝えていく。

(三冨裕騎)

■民家を工房に

 福山市出身の藤井さんは現在28歳。大学卒業後は広告系の営業サラリーマンとして働いていた。しかし、広島・西条の賀茂泉酒造で藍染め体験をしたことがきっかけで藍の道に入る。「藍は空気に触れて酸化することで発色し、青くなっていくが、色が変わっていく様子がきれいで面白かった」という。

 「藍染めに携わっている若い人はデザイン分野や美大出身の人が多く、少しコンプレックスもあった。何の知識もない自分ならではのできることは畑からやることだろう」。そう考え、蒅作りを手掛ける藍師に弟子入りした。蒅を専業で作っているところは全国でも5軒しかないという。徳島で2年弱修行し、昨年3月に現在の場所に拠点を構えた。親戚が山野町に住んでいたという縁もあり、空き家となっていた民家を借り、藍染め工房や蒅作りができる場所などを作り上げた。

 藤井さんが栽培しているのは、タデ藍という日本で古くから使われてきた藍の種類。3月に種をまき、4~5月に畑に植え替え、6~9月に葉を収穫する。10月から葉を乾燥させ、1~2月に藍染めの原料となる蒅を作る。蒅作りは土間で葉に水と酸素だけを与えて発酵させるもので、週に1回水を与えてかき混ぜる工程を18週間繰り返す。その中で大事なのが温度管理だ。温度が下がると発酵しなくなってしまうため、わらを編んだむしろを葉にかけて保温。その調整には気を使うという。昨年は1200平方メートルの土地で藍を栽培し、260キロの乾燥葉を収穫、230キロの蒅が完成した。今年は土地の規模を3倍に広げる予定だ。

染料となる蒅は1~2月に作る

■全て天然のもの

 蒅を使って実際に藍染めができるようにする工程が藍建てだ。藤井さんは蒅に、灰汁(あく)と貝灰、ふすま(小麦の皮で一般的にブランと呼ばれるもの)という天然素材を混ぜ、ようやくよく目にする藍染めの釜ができあがる。全て天然のものを使っているため、廃水の心配もない。

 「藍の色を決めるのは土」と呼ばれることもあり、藍師によって染まり方のクセがあるのも面白いと藤井さん。まだ始まったばかりだが、地元デニム企業との連携も視野に入れる。一部製品販売やワークショップなどを手掛けているが、基本的には染色委託を中心に事業を進めていく考え。「藍の栽培から手掛ける魅力を感じてもらえたらうれしい」と広がりに期待を込めた。

染色釜も手作りした
「ようやくここで作った蒅ができ、染めるのが楽しみ」と話す藤井さん

(繊研新聞本紙20年3月13日付)



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