あらためてAIとは何か③ 業界が押さえるべきトレンド

2019/11/11 06:27 更新


【知・トレンド】《入門講座》あらためてAIとは何か③ アパレル業界が押さえるべきトレンド

 前回はAI(人工知能)、その中でもディープラーニングについて話しました。実際にどのようにAIが活用されているかの事例を紹介する前に、アパレル業界はもちろん、小売流通業界全体が押さえるべきトレンドを紹介します。私たちは今後①消費者の購買行動の多様化②労働人口の減少③テクノロジーの発展の三つの流れを押さえる必要があると考えています。

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 まず、「消費者の購買行動の多様化」については、ECサイトでの購買は今や常識となり、個人間取引で購買が行われることも多くなりました。また、実店舗で試した商品をネット上で検索するといった店舗のショールーミング化や、SNSでシェアされている口コミを元に商品を検討するなど、購入だけでなく、それ以前の認知、関心などの局面でも変化をもたらしました。

 これに加え、日本全体として「労働人口の減少」という課題があります。17年に発表されたみずほ総合研究所の調査によると、16年から65年の約50年間にかけて、日本の労働人口は半分になると言われています。これによって生じる人手不足は、店頭で販売員による接客を一つの価値としてきた実店舗にとっては深刻な課題です。これまで人手に頼って解決してきたことを、テクノロジーなど他の手段も使いながら、解決することで、不足を補う必要があります。

労働人口が減少するなか、不足を補う必要がある

 こうした流れに対応するのが、三つ目の「テクノロジーの発展」です。インターネット、モバイル、IoT(モノのインターネット)、AI、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)など様々なテクノロジーの発展により、無人レジやスマートミラー、QRコードによる商品検索など、新しい店頭顧客体験が生まれ、さらには、オンラインと同様に、実店舗でも取得・蓄積できるデータ量が飛躍的に増え、分析手法としてのAI活用の可能性も広がっています。

 ここで重要なのは、一概に実店舗などのオフラインがいいか、ECなどのオンラインがいいかという二者択一的な思考ではありません。顧客行動が多様化し、オフラインとオンラインの垣根がなくなりつつある今、どちらか一方だけではなく、双方のデータを統合することで、顧客を個別に理解し、パーソナライズ化された顧客体験を構築することが、これからの小売流通業に求められています。

 さらには、直接の顧客接点となる販売だけでなく、統合した顧客データを需要予測や在庫発注の精度向上に活用するなど、企画、生産/仕入れ、物流などバリューチェーンの複数ポイントに適用することで、より高度な顧客体験の向上を目指すことができると考えています。

 次回以降は国内外の小売流通企業がAIをはじめとしたテクノロジーを活用し、新しい顧客体験を作ろうとしている事例を紹介します。

(伊藤久之アベジャ・インサイト・フォー・リテイル事業責任者/繊研新聞本紙19年7月8日付)



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