22~23年秋冬パリ・メンズコレクション デジタルにはないリアルな魅力伝える

2022/01/26 06:28 更新


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 22~23年秋冬パリ・メンズコレクションはビッグブランドのフィジカルショーと東京ブランドの都内でのフィジカルショーのデジタル配信が相次いだ。東京とパリという異なる場所ではあるが、リアルに体験できるショーの持つ魅力や服の力を再認識した。

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 ファッションの流れを変えた天才が本当に天に召されていったのだと再認識させられた。ルイ・ヴィトンの会場全体を包む水色は雲一つない青空のようだった。その中央には絵に描いたような赤い屋根、円筒からは煙が立ち上る。誰もが夢見る温かい家庭の象徴のようにも見えた。急逝したヴァージル・アブローの描いた夢、「ルイ・ドリームハウス」と名付けられた22年秋冬コレクションやプレゼンテーションのフォーマットはほぼ完成していた。

 天に続く階段の周りを遊びに興じる天使のようにパフォーマーたちが舞う。オーケストラの演奏とともに、そのたもとのドアからモデルが姿を現した。大きめショルダーにウエストを絞ったウールの構築的なテーラーリング。その一方でビンテージのTシャツ風プリントをパネルとしてジャケットボディーに使用した。スポーツウェアを再構築したトラックスーツスカート、その手にはグラフィティーを描くかのようにペンキ缶のバッグを持つ。ベルベットのロングスカートなどダイバーシティー(多様性)なアプローチは続いていた。

 自身が融合させたファッションとアートの記録をつづるかのように、ゴブラン織りのタペストリー生地に絵画風のグラフィックが落とし込まれた。織物の美しさはフローラルのジャカードで、ミリタリーパーカからブーツまで全身で表現された。そんなタペストリーはブルゾンやジーンズの上でモノグラムのデニムとも出合った。

ルイ・ヴィトン

 ある瞬間プレゼンテーションが止まった。その時はやってきた。ウールギャバジンの白いショーツのセットアップにかぶったキャップの上に長いベールが舞う。ベースボールジャケットにはチュールのスカートと、白のルックが続く。その中には故人と親交のあったナオミ・キャンベルの姿も。そして大きなレースの羽をたたえた天使たちが降り立った。フィナーレにはチームが登場し、拍手とともにヴァージルの冥福を祈ると共に偉業を称えた。

ルイ・ヴィトン

 その場にいた誰もが感情的になるショーだった。やはりこのショーを見るとヴァージルは自分の死期を察していたのだろうと思えてしまう。現実的な話に戻ると気になるのは後任人事だ。すぐには探さないとは聞くが。

 エルメスのメンズクリエイティブディレクター、ヴェロニク・ニシャニアンもまた、ゴブラン織りのタペストリーに魅了されていた。会場となったのモビリエ・ナショナル、その壁には実際のアンティークとともにパネルでタペストリーを展示。ジャカードニットのツインセットの編み目や、ジップアップのパーカのテクニカル素材の艶感のある織りで、時を刻んだアンティークが持つデカダンスな風合いを表現した。秋冬は遊び心のあるコレクションでもあった。白い毛足の長いタスカンラムのライニングは取り外しが可能。コートやブルゾン、ジャケットに重ねられたベストは実はセパレートで、胸元のジップを開けることで中のポケットをレイヤー越しに使用できるようになっている。テーラードのラペルの裏にはレーザーやサテンのインサートパネルが見え隠れ。パンツはくるぶし丈と短めで、ツータックのテーパードやユーティリティーなど若々しい印象だ。

エルメス(©Filippo Fior)

 ソフトなカーフスキンのブルゾンからシャツに至るまで、ジップ使いが全体的に多かった。そんなロックなデザインは、ライダーズジャケットのポケットやチェーンを配した、アイコンバッグの一つ「オータクロア」にも落とし込まれた。レザーの美しさはプリントにエンボスを重ねたラムスキンや息を飲むような美しい輝きを持つクロコダイルのブルゾンに見ることができた。22年春夏のスケーターに続き、フランス流ロックな若いエネルギーを感じた。

エルメス(©Filippo Fior)

(ライター・益井祐)

 メゾン・ミハラ・ヤスヒロは、東京・浅草のすしや通り商店街を舞台にした路上ショーで新作を見せた。ショーが始まるまで、商店街を埋め尽くした観客に戸惑いながら一般の通行者が行き交う。ショーを待つ観客にはメイドさんや芸者さんから食べ物が配られる。かつて浅草で靴作りをしていた三原康裕の浅草への思いに応えて、商店街が無料で食べ物を提供した。

 スカフレイムスによる生演奏とともにショーが始まる。秋冬は三原らしいカスタマイズのディテールがいっぱい。袖が外れたジャケットやカットオフのセーター、ダメージ加工のアイテムが目立つ。ビッグサイズのスーツやビッグレザージャケットなど量感を生かしたストリートスタイルが楽しい。そんなショーに横やりを入れるのは警察官。商店街全面協力と思いきや、警察に届け出をしていなかったのかと心配になる。しかし、商店街に横付けしたパトカーから降りてきた警官は実は三原本人。デザイナー本人がモデルを誘導し、商店街を警備する。そんなハッピームードにあふれたショーに観客たちは笑顔になった。

メゾン・ミハラ・ヤスヒロ(写真=加茂ヒロユキ)

 ヨシオクボは、前シーズンに続き本社ショールームで、フロアショー形式で新作を見せた。秋冬もジャポニズムからの発想を感じさせるラインが揃う。竹細工のヘッドピースのモデルが着るのはスポーツとジャポニズムのミックススタイル。ボーンで布に張りを持たせるディテールは、凧(たこ)が着想源となっている。

 MA-1は丸い凧のようなパーツを組み合わせ、チュチュのようなディテールをウエストから広げる。プルオーバーはスリーブからショルダーにかけて丸い骨組みを入れて、サーキュラーシルエットを作る。ブルゾンやセットアップにはスポーツカイトを思わせるグラフィカルな配色。背中に和凧の龍を描いたプリントもある。テーラードコートは太い帯のようなベルトを巻き付けて凛(りん)とした雰囲気に。スタンダードアイテムを軸にしながらもボーンのパーツを取り入れることで、エキセントリックに変化した。

ヨシオクボ(写真=加茂ヒロユキ)

(小笠原拓郎)


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