【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19年春夏パリ・コレクションには、素朴で優しいスタイルから70年代調まで幅広いテイストが広がっている。そのなかで共通するのは、体のラインを強調するシルエット。体の中心でツイストしたり、結んだりして布を体に沿わせる。背中を大きく開けたバックシャンも目を引く。バイアスの布帛や伸縮性のある楊柳、ニットやジャージーが多く使われている。
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ロエベのショー会場に入ると、ファッションとは不似合いな大きな自動車の洗車用ブラシが回転している。床にはたくさんのレトロなレコードプレーヤーが置かれ、様々な音楽が流される。レコード以外に陶器もレコードプレーヤーにのせられ、ろくろに乗っているかのように回転し続けるというシュールな光景が作られる。60年代のロンドンのアートギャラリー「シグナルズ」からイメージした空間だという。
そこに登場するのはマルチストライプのニットドレスやサテンのチュニック。ジョナサン・アンダーソンらしい縦に長いシルエットをベースに、シンプルなカットの中にバイカラーのパーツの切り替えや素材の切り替えで変化を作る。サテンとレザーや、スエードの切り替えなど、レザーを背景にしたロエベらしいクラフトテクニックが生きている。
ゆるく編んだケーブルニットのボリュームセーターはサテンの光沢のパンツやスエードパンツとコーディネートして軽快に。テーラードジャケットは左右の襟の色を変えたアシンメトリーディテールで新鮮さを出す。たくさんのかごバッグやクロシェニットのバッグなど手仕事によるバッグや、レザーのネックピースといったアクセサリーも充実した。

クロエはスカーフのようなパネルプリントの布で描くフルイドラインにプリミティブなムードを加えて見せた。イメージしたのは、太陽の元で大地を感じながら生きる、自由なスピリットを持つ女性。馬のプリントのスカーフディテールをバイアスに流したドレス、プリミティブなジャカード柄にフリンジを飾ったドレス、クロシェニットのドレスや縄ひものベルト。創業者のギャビー・アギョンの出身地であるエジプトを思わせるプリミティブな要素を感じさせる。
女性の体のモチーフや太陽の模様からは古代文化のスピリチュアルな雰囲気も漂う。石を飾ったドレス、ストライプとレースを切り替えたシャツドレス。エレガンドなフルイドラインとともにどこか素朴なムードもある。ヒッピーモダニズムもキーワードの一つ。70年代調のフレアパンツが多くスタイリングされた。


オフホワイトのショー会場には庭園を取り囲むように陸上のトラックが作られている。そのトラックをランウェーの代わりにモデルが歩いてくる。春夏は白をメインにフラッシュイエローを差し込んだスタイル。タイトミニにつぎはぎのニットベスト、透け感のあるタンクトップ。ナイキとのダブルネームを思わせるスウォッシュマークが描かれる。陸上用の本格的な全身タイツの一方で、ボーンを入れてフレアラインを作るドレスやトレーンを引くドレスも出している。パイソンプリントのダウンジャケットやコートも。


(写真=大原広和)