【パリ=小笠原拓郎】レディスにも共通することだが、パリ・メンズコレクションは世界中から集まるデザイナーのクリエイションの質で他の都市を圧倒し続けた。しかし、近年はインディペンデントのデザイナーが起業して成功する機会も限られ、90年代後半をピークに若手ブランドの台頭を見る機会も減った。
ブランドの再編とコングロマリット化が進み、今やラグジュアリーブランドはパリの主流を占めるようになった。ラインナップの固定化により、かつてパリが持っていた自由な空気を失い、コレクション全体に予定調和とマンネリ感をもたらしている。
一方でビッグブランドのデザイナー交代が相次ぎ、発表を中止するブランドが後を絶たない。18年春夏は「ジバンシィ」が発表を取りやめ、「サンローラン」もレディスと一緒に9月に見せるため展示会のみでの発表となった。こうした中、数年前から伸びてきた若手デザイナーのクリエイションへの期待は高い。
ハンドクラフト散りばめたスポーツスタイル・・・ヴァレンティノ
ヴァレンティノが、トレンドど真ん中のスポーツスタイルを見せた。アノラックにトラックスーツ、カラフルなモカシンシューズ。そのスポーツアイテムにはヴァレンティノらしいハンドクラフトの技が散りばめられている。
ヴァレンティノ
アノラックはきれいな色の切り替え、トラックスーツのストライプには細かなビーズ刺繍を飾る。チノパンツは裾の後ろ側にプリーツを入れてシェイプを作る。レザーのプルオーバーやショート丈のパーカは、ボックス風シルエット。デニムのセットアップでさえエレガントに見えるから不思議だ。シャツは襟元にテープのような布を垂らしたディテール。
ウエストから垂らしたチロリアンテープ風のベルトも、装飾的でありながら素朴な雰囲気を加えている。トラックスーツ、マウンテンパーカ、MA‐1、デニムセットアップなど、もう見飽きているはずのアイテムが輝いて見える。それは、トラックスーツ一つとってもシェイプを追求し、手仕事の技の持つ力強さを加えたから。見飽きたスポーツミックスに新風を吹き込んだ。
ハイダー・アッカーマン
ハイダー・アッカーマンは、シンプルながら凝った柄で見せるエレガントなスタイル。ドットやストライプは、ところどころかすれたような柄になったり、破れた生地を重ねたような柄だったり。その柄はプリントではなく、ジャカードで描かれている。ドットとストライプとチェックを同じ黒と白のモノトーンの中でコーディネートする。
ハイダー・アッカーマン
その一方で、鮮やかなライトブルーのストライプスーツは長い着丈のシルエットで、どことなく90年代の「ヨウジヤマモト」を思い出させる。ニットも多く、ストライプのニットパンツやジャージーのリブパンツといったアイテムをエレガントなジャケットと組み合わせる。
今どきの流行のスポーツミックスだが、他のブランドとは違うハイダーらしさが漂うのはシェイプや着丈が独特だから。パンツはローライズで、アンダーウェアをのぞかせたコーディネートが可愛い。このためにわざわざ下着のパンツまで作るほどこだわっている。足元はリッチなパイソンシューズやサンダル。
(写真=catwalking.com)