ゾゾ前澤社長が語る「ZOZOARIGATO」の真相と新戦略㊦

2019/03/14 06:30 更新


 来期からゾゾタウンとPBの成長戦略を描き直す。あらゆる人を対象に数量を売る販路という役割を超えて、MDや需要予測、サイズ最適化に寄与するプラットフォームを目指す。

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 PBは昨年までの自前主義を見直します。この1年は当社の商品企画力のなさを痛感しました。来期はゾゾスーツで得た100万件以上の体形データを活用。ユーザーの体形に応じた多サイズ展開での販売プラットフォームをブランドに開放し、ブランド企画のアイテムを開発・販売し、「顧客ニーズの多様化」に応えます。

 PBの数値を初公開すると、この1年弱でスリムテーパードデニムパンツは約21万本、無地Tシャツ約7万枚を販売しました。適切な価格と個客の体形に合った「マルチサイズ」展開で、ここまで数量が売れる。来期はPBで得た体形や多サイズに関するノウハウをブランドに公開します。

 つまりゾゾタウンは、今までの単なるECプラットフォームから、物作り・MD支援なども提供できる新しいプラットフォームへ進化します。ブランドには定番品やシーズンアイテムを30~50サイズの多サイズで作ってもらい、1品番で1万~10万枚売ることを目標とします。

「数年後には洋服は20サイズぐらいあることが普通になるのでは」と話す前澤社長

 EC発PBで始めたマルチサイズ対応は、次の販売モデルとして可能性に満ちあふれているという。

 PBで消費者の「サイズへのニーズ」は真に理解できました。今までのSMLの3サイズでは、裾上げはもちろん、自分と合わない箇所を直したり、仕方ないと諦めてしまっているお客が多かった。ゾゾのデニムパンツやTシャツが数センチ刻みで選べることが分かると、自分に合ったジャストサイズにたどり着くまで何度も交換を希望され、ピッタリのものを見つけようとするお客が多く見られました。

 これを考えると、数年後には洋服は20サイズぐらいあることが普通になるのではないでしょうか。試着する必要がなくなり、さらにネットで買いやすい時代にもなります。

 これまでの多店舗展開では在庫を店頭に常備せざるを得ないので、SMLなど「サイズ絞り込み」が効率的でした。EC主体ビジネスでは在庫を集約管理でき、多サイズ展開も可能になる。ブランドにはゾゾタウンのプラットフォームを利用して、多サイズ展開に挑戦していただきたいなと思います。

 多サイズが浸透し、それがファッション業界の当たり前になると、よりEC主体である必然性が増します。米自動車メーカーのテスラのように、店舗展開をやめ、販路はECのみと決断するファッションブランドが、近いうちに出てくるかもしれません。

 ブランド各社が力を入れている自社ECは、熱心な顧客との深いつながりを持つ意味でとても大切です。モール型のゾゾタウンと自社ECはうまく共存していくべきですが、最近の自社ECを見ると、残念ながら「小さなゾゾタウン」のようなサイト表現で、同質化しているように感じます。

 自社ECは売り上げを重視するより、ブランドの世界をファンに伝える場所であってほしい。アップルストアと家電量販店の関係性のように、自社ECはコアなファンを引きつける場所、ゾゾタウンはライトなユーザーに買ってもらう場所と。決済システムの提供、フルフィルメントでの協力、集客支援などの裏方業務は子会社のアラタナを通じてサポートしていきます。




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