WWFジャパンがGOTSと工場ツアー 小規模事業者のグループ認証を訴求

2024/06/19 06:28 更新


繊維商社やアパレルメーカー、メディアなど10人が参加(大正紡績の原綿倉庫で)

 小規模事業者が国際基準の認証を取得できるチャンスが広がりそうだ。オーガニック繊維を使った繊維製品の加工に対する世界基準のGOTS(オーガニック・テキスタイル世界基準)は昨年、「管理型サプライチェーンスキーム」(CSCS)のパイロットプロジェクトを実施した。同プロジェクトに参加した縫製工場の三恵メリヤス(大阪市)が、CSCSの枠組みでGOTS認証を取得した初の事例になった。WWF(世界自然保護基金)ジャパンはCSCSに着目、三恵メリヤスと連携しCSCSに参加した大正紡績(大阪府阪南市)、V-TEC(大阪市)も含む3社の工場視察ツアーを実施。CSCSの意義を訴求した。

最大で30の事業者で構成

 「サプライチェーン管理の複雑さと、認証にかかるコストの負担が、GOTS認証を目指す小規模事業者の妨げになっている」とGOTS。CSCSは最低で8、最大で30の事業者で構成され、各事業者の従業員が20人以下のサプライチェーンなら〝グループ〟で認証を受けることができる枠組みだ。現在「CSCSは全ての市場で導入を目指し、検証中」という。

 各社の現場で共通するのは、3S(整理、整頓、清掃)の徹底。GOTS認証の原料と素材、その生産・加工ラインは明確に区分けして管理することが監査の重要な点の一つ。従業員の安全衛生という観点でも不可欠な要素だ。日々の生産活動を取り巻くデータの収集と保管、目標設定とその達成に向けた継続的なモニタリングも求められる。その仕組みの構築と、日々の業務に落とし込むための工夫が各現場で凝らされていた。

V-TECでは染色した生地の全ロットをいつでも素早く引き出せるように整然と管理している

従業員の定着にも期待

 「多品種小ロット生産に対応している分、原綿の管理には最新の注意を払っている」という大正紡績。同社は10年に先駆けてGOTS認証を取得し、認証事業者としてのノウハウを積み上げてきた。営業課主任の森田真生さんは、「GOTSと向き合い、現場の意識が変わった」と話す。元々3Sの徹底に努めてきたが、今は外部のコンサルタントを招いてさらに高い次元の3Sを目指している。

 以前から薬剤などの物品やデータの管理、目標設定、モニタリングの仕組みを構築していたV-TEC。同社も多品種小ロット対応を強みにしている。それだけに業務の効率化による生産性向上や、それによるコスト削減は生命線だ。データは基本的に可視化し、目標に対する進捗(しんちょく)も明確。「現場の励みにもなる」(髙倉修治社長)という。

 「認証に向けた取り組みが従業員の定着率の向上にもつながると思う」というのは三恵メリヤスの三木健専務取締役。同社もGOTSの製品管理規則に準じた業務の徹底とともに、トイレなど水回りをきれいにしたり、すのこを敷いていた床をカーペットに変えて転倒しにくくしたり、働きやすい環境づくりに努めてきた。

GOTS認証を目指した取り組みが従業員の定着率向上にもつながると考える三恵メリヤス

 旧式のミシンで60~80年代の仕様を高度に再現し、脇に縫い目のない丸胴のカットソー製品を作り続ける同社には、海外からの引き合いも増えている。GOTS認証は海外市場を開拓する上でも強みの一つになる。さらに、同社が認証機関に申請していた脱色のプロセスがこのほど認められたという。従来、日本製のGOTS製品は生成りだけだったが、「ついに白のGOTS製品作りにトライできる」と強調。GOTS製品の広がりに期待を込めた。



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