創業の周年を記念し、一般消費者を招いての大掛かりなイベントの開催がファッション企業で盛んになっている。大きなコストが掛かるものだが、オンラインコミュニケーションが活発な時代だからこそ、こうしたリアルイベントの価値が増している。
社外に向けた訴求だけでなく、社員に自社の歴史や理念を浸透させたり、モチベーションを上げるなど、インナーブランディングとしての効果もある。
(友森克樹)
ウィゴーは8月29、30日、東京・渋谷の大型複合施設「渋谷ストリーム」で、創業25周年を記念したイベント「ザ・パッション・フェス~情熱祭~」を開催した。著名人のトークショーやライブを行ったほか、同社関連ブランドの販売ブースや外部企業との協業ブースなど、ウィゴーの過去・現在・未来を体現するコンテンツを多数集めて、社内外に向けて発信した。
開催期間中は目標を上回る約1万5000人が訪れた(入場は無料)。同施設の3フロアを使用し、6階を約20組のアーティストやモデル、ユーチューバー、お笑い芸人などが出演するライブフロア、5階を「プニュズ」「WC」(ダブルシー)など同社の関連ブランドが商品を販売するフロア、4階を外部との協業を主としたフロアとして運営した。
◆社員が自発的に企画・運営
イベントのコンセプトは、「PASSION・FOR」(パッションフォー)。同社が18年3月から行っている、情熱を持つ人々をユーチューブで紹介し、応援するプロジェクトの名前から採用した。
このコンセプトの提案に加え、園田恭輔社長は「街やストリート、祭りのような雰囲気を演出し、体験を重視したイベントにしよう」と提案したのみで、後はプレス・PRチームが主体となり、現場に近い社員に有志を募って構成した実行委員会が企画・運営を担った。イベントの開催期間に合わせて、都内で全国の店長を集めた3日間の会議を実施。地方で勤務する店長もイベントをじかに体験できるようにした。
◆特別商品を先行販売
5階には9ブランドが出店し、イベント限定商品や、特別な商品を店舗に先駆けて販売した。
お笑い芸人の渡辺直美さんがプロデュースするレディスブランドのプニュズは、大阪地区の店舗だけで取り扱っているたこ焼き柄の長袖スウェットトップ(4999円)を販売した。
男性モデルのこんどうようぢさんがプロデュースするジェンダーレスファッションブランド「ディング」は、こんどうさんの飼い犬をプリントした長袖Tシャツ(2999円)を会場限定で販売した。
お笑いコンビのTKOの木下隆行さんがディレクションするメンズブランド「ブッカ44」は、人気商品のくまのキャラクターをあしらったTシャツ(4990円)やサコッシュ(3990円)で、イベント限定色を先行販売した。
今春夏に始動し、東京・原宿地区中心に販売しているスーベニアブランド「レボム」は、どんな商品が出てくるか分からないカプセルトイ(1回100円)を設置するなどして客を楽しませた。
◆新しさと懐かしさが融合
4階はユーチューバーやアーティストのほか、ゲームやアプリと協業したブースなど、ウィゴーの事業性を体現したかのようなバラエティー豊かなコンテンツが揃った。
注目は人気スマートフォン向けゲーム「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」との協業ブース。パーカ(2999円)などの衣料品やコインケース(1500円)、キーホルダー(600円)などを会場で先行販売したところ、初日の朝は開場を待つ行列ができた。販売は整理券を配るほどで、20~30代の男性中心に初日の午後の段階で100人以上が購入していた。
VR(仮想現実)関連事業を手掛けるHIKKYとの協業ブースでは、3Dアバター・モデルを使って試着・鑑賞・購入ができるVR空間上の展示即売会「バーチャルマーケット」の体験コーナーを設けた。21~25日には、ウィゴーも同展示即売会に出店し、VRマーケットファッションブランド「ベイダーベイダー」を販売する。ゴーグルを装着し、コントローラーを操作して、VR空間上のベイダーベイダーのTシャツをアバターに着せ替えることなどができた。このほか、今年20周年を迎えたダンスシミュレーションゲーム「ダンスダンスレボリューション」で遊んだり、恋愛心理学系ユーチューバーの仮メンタリストえるさんに恋愛相談ができるブースもあり、にぎわっていた。
会社の領域を広げ、社員が成長できる場に
園田社長
会社としてのウィゴーのこれまでとこれからを関係者やお客様、社員に向けて伝えることを目的に今回のイベントを開催しました。
おかげさまで外部の様々な企業から協業のご提案をいただいています。若者に向けてトレンドファッションを提案する「ウィゴー」の屋号では、協業出来ることに限界を感じていて、今後は新規事業の立ち上げなど、会社としての領域を広げていく必要があると考えています。25周年以降もさらにパワーアップします。
今回イベントの大枠として「こんなことをやろうよ」とは伝えたのですが、細かい部分は実行委員会が「挑戦してみたいこと」をベースに意見を出し合って、素晴らしい内容に仕上げてくれました。今回の成功体験は、今後当社の強さになっていくと思います。
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(繊研新聞本紙19年9月11日付)